新たなデジメンタル

「と、とにかく今は、カイザーを追うんだ」

 その太一さんの言葉に、私たちは大人しくトロッコに座り込む。大輔くんも、前のトロッコへ戻って言った。私もその後に続く。


「なーんで湊海ちゃんも着いてくるんだよ?」

「大輔くんの傍にいたいからだよ」

 大輔くんは怪訝そうな目でこちらを見たが、私はにこりとそう言い返し、彼と腕を組んだ。


「うえっ!? そ、それって……!?」

「またタケルくんに喧嘩吹っかけないように、ね!」

「そ、そ、そっちかあ……」

 慌てふためく大輔くんにウィンクをすると、何故かがっくりと肩を落とした。どうしたのだろう。


「おいおいお前……どこでそんな技術身につけたんだ?」

「ヤマト、こいつは天然だ。何も考えちゃいない」

「さすが湊海様ですね!」

 苦笑いを零すヤマトさんの肩を、太一さんがぽんと叩く。ラブラモンは目をキラキラとさせながら、私を褒め称えた。どういう意味じゃい。
 そんなやり取りをしていると、伊織くんのD-3が反応し始めた。


「あ、これは……!」

 伊織くんは素早く、D-3を覗き見る。


「なに?」

「デジメンタルの反応です!」

 伊織くんはこちらにD-3を見せながら、そう説明した。


「え、デジメンタルの?」

「まだあったの?」

 大輔くんとヒカリちゃんは驚きの声をあげた。残りのデジメンタルは、友情、純真、誠実の3つだ。まさか他に選ばれし子供が――? いや、私たちのように、ヤマトさんたちのデジヴァイスが変化することもある。この反応しているのは、どちらのパターンだろうか。

 私たちはトロッコを止め、反応の強い場所へ向かっていく。


「あの紋章は……!」

 ヤマトさんが思わず声をあげる。岩の壁に描かれていたのは、友情の紋章だった。


「行ってみるか!」

「行ってみましょう!」

 岩の壁に近づいていくと、どんどんD-3の音が大きくなる。突き当たりまでいくと、反応が更に強くなった。

「やはり、ここのようです!」

 伊織くんが確信を持ってそう言った。恐らく、間違いないだろう。


「あれは?」

「なになに?」

 何かに気づいた大輔くんが、ブイモンと共に駆け出す。


「あった!」

「これは……!」

「友情の紋章だ……!」

 大輔くんが指さした窪みには、デジメンタルがおいてあった。太一さんとヤマトさんが、呆然と呟く。
友情のデジメンタルは、黒色の細長い形状に、金色の角が生えていた。もちろん、友情の紋章も青く刻まれている。


「友情?」

「俺とヤマトが今まで喧嘩してきたっていう証みたいなもんだよ」

「つまんないことでよく揉めたよな」

「喧嘩してきたことが友情の証? ……なんですかそれ?」

 大輔くんは太一さんとヤマトさんのやり取りにピンとこないようで、首を傾げる。2人はそんな大輔くんを見て、楽しそうに笑いあっていた。


「これは、一体誰のデジメンタルなんでしょうか?」

「あたし達みたいな子どもが、まだ他にいるの?」

「それとも、タケルやヒカリちゃんたちみたいに俺の、ってこともあるかもしれない」

「ヤマト、持ち上げてみろよ」

「そうだな、やってみよう」

 ヤマトさんは太一さんに促され、デジメンタルに手をかける。しかし、懸命に動かしていたものの、全く持ち上がる様子はない。
 伊織くん、太一さんが続けて挑んだものの、やはり持ち上がらない。


「他のみんなもやってみろ!」

 そのヤマトさんの号令に、私たちは順番にデジメンタルを持ち上げたが、ぴくりとも動かなかった。


「くっ……私の友情パワーが足りないのか……! 京ちゃん、私に力を!」

「いや、多分無理だと思うわ」

 京ちゃんの冷静なツッコミを受けつつ、私はもう一度試みたが、やっぱり持ち上がらない。


「く、悔しい……」

「全く、そんな簡単に持ち上がったら苦労しないぞ」

 太一さんは呆れた顔で私の頭をぽんぽんと叩く。どうやら、私は友情を受け継ぐには力不足のようだ。少し残念。


「友情のデジメンタルか……」

「大輔、お前の番だ」

「俺は違うと思います」

 太一さんに促された大輔くんは、きっぱりと断りを入れた。


「なんで?」

 ヤマトさんが不思議そうな様子で尋ねる。


「だってこれ、友情のデジメンタルなんでしょ? 俺、友情とかそういうの、全然わかんないし……」

「わかんないからいいんだよ」

 大輔くんが指をモジモジとさせている様子を見て、太一さんは軽く笑い飛ばす。


「アグモンのことで太一さんやヤマトさんが話してること、俺全然わかんない。喧嘩した方がいいなんて言われても、ピンと来ないし……」

 そこまで言い切ったとき、大輔くんはヤマトさんと太一さんに捕えられた。


「御託並べてないでやれってんだよ、先輩の言うことが聞けないのか!」

「先を急いでるんだから、さっさとしろ!」

 あまり乗り気ではない大輔くんにしびれを切れた2人は、無理やりデジメンタルの前に突き飛ばす。


「はい、わかりました……!」

 大輔くんは仕方なく、といった様子でデジメンタルを持ち上げた。私たちはじっとその背中を見つめ、見守った。――しかし、デジメンタルが動くことはなかった。


「あれ? このデジメンタル、きっと大輔くんのだと思ったんだけど……」

「うーん……これは俺のときみたいに、気持ちの問題かもしれないな」

 私が首を傾げると、飛鳥くんが小声でそう呟いた。なるほど、素質はあっても心意気が中途半端だと、デジメンタルは持ち上がらない――のかな? 普段の大輔くんなら、きっと持ち上げられるんだと思う。なぜなら彼は、とても友達思いだから。


「気合が足りないのよ、あのバカ」

「ろ、ロップモン……」

 ロップモンの毒を吐く様子に、ラブラモンは苦笑いを零した。仕方ないね。


「いやー、やっぱダメでした……」

 大輔くんがこちらを振り向こうとしたそのとき、突然耳障りな音が辺りに響いた。



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