青い稲妻ライドラモン


 私たちがトロッコで進んでいると、上空からテントモンがやってきた。


『あ、テントモン!』

「ここにいはりましたか、捜しましたで」

 テントモンはそう言うと、私たちのトロッコへ飛び移った。


「大変だったようでんなあ」

「うーん……まあ結構、ね」

 私がそう答えるのと同時に、Dターミナルの着信音が聞こえた。どうやら、伊織くんのものから鳴ったらしい。


「光子郎さんからのメールです」

「光子郎はん、なんて言うてます?」

「デジモンカイザーは、南に進撃中だそうです」

「ということは……」

 ヤマトさんが、立ち上がりながら呟いた。


「ほんなら、このまま進んで行った先ですわ」

 テントモンの説明に、私はこくりと頷いた。偶然にも、私たちの進行方向はカイザーの行き先らしい。



「よおし、今度こそ必ずアグモンを取り戻してみせる!」

「ああ、あんな奴の思い通りになんかさせない!」

 太一さんがそう意気込むと、ヤマトさんも力強く頷いた。2人の言う通り、次こそは失敗できない。アグモンを傷つけることになったとしても、何とかイービルスパイラルを外さなければ――。


「そうだテントモン、頼みがあるんだ」

「へ? なんでっか?」

「ガルルモンを、捜してきて欲しいんだ」

「ガルルモンでんな? わっかりました、任しといてください!」

 ヤマトさんのお願いに、テントモンは再び空を飛んでいった。光子郎さんと同じく、裏方で色々としてくれているみたいだ。ありがとね、テントモン。


「ちょっと待って! それって、メタルグレイモンと戦うってこと?」

 大輔くんが立ち上がりつつ、ヤマトさんに問う。トロッコの上で立つのは危ないよ。


「ああ」

「迷っていては、結局共倒れだ。やるときはやらなければ……!」

 確かに、仲間と戦うのは辛いことだ。それはヤマトさんが1番よくわかっているだろう。でも、だからこそ、私たちは前を向かなければならない。アグモンを救うために。


「いいな、太一」

「ああ」

「でも俺……太一さんのデジモンに向かって攻撃するなんて、出来るかなあ」

 大輔くんは不安そうに呟いた。彼にしては珍しく弱気だ。私はフォローを入れようと口を開いた。


「大輔く……」

「でも仕方ない」

 最近、よく発言を遮られるのは気のせいだろうか。まあそれはおいとくにして、タケルくんは大輔くんに向かってそう言い放った。


「なんだって?」

 予想外の言葉を言われたのか、大輔くんが不審そうな顔で聞き返した。


「嫌だけど、仕方ないよ。戦わなければ、結局アグモンを助けることは出来ないんだ。仕方ないよ」

「太一さんのアグモンを倒すってのか!? 仕方ないってなんだよ、仕方ないって!」

 大輔くんはタケルくんをぎっと睨みつけた。あーあ……この感じ、3年前に見たことあるぞ。


「倒すとは言ってないよ! あのイービルスパイラルを外すんだ!」

「でも出来なかったじゃないか! デジモンを倒さなければ、あのスパイラルも外せないんだ!」

「でも太一さんがそうするって決めたんだ、一緒に頑張るしかない!」

 ついにはタケルくんも立ち上がり、大輔くんといがみ合う。



「簡単に言うなよ!」

「何するんだ!?」

 大輔くんがこちらのトロッコに飛び乗り、タケルくんと掴み合いの喧嘩を始める。


「こ、こらこら! なにこんなせまいところで暴れてんの!」

 私は慌てて止めに入り、大輔くんの腕を引っ張ってこちらに寄せた。タケルくんもだが、今日は特に大輔くんが熱くなりすぎだ。


「こら、あんたたち!」

「2人ともやめて!」

「 危ないってば!」

 京ちゃんとヒカリちゃんと飛鳥くんも、同じように止めに入る。しかし――。


「止めるな」

 そんな私たちに、太一さんが間に入った。


「どうして?」

「止めなくていいんですか?」

 ヒカリちゃんと伊織くんが、目を見開いて驚く。


「俺たちもよく喧嘩したよな……。喧嘩もしないでいたら、一生友達になんかなれないんだよ。だからどんどん喧嘩した方がいい」

「……ふーん」

 私は目を細めて太一さんの言葉を聞いた。その意見は正しいと思うが、時と場合というものがある。ちなみに今は……控えた方がいいんじゃやいかな!?


「……喧嘩した方がいいなんて、どういうこと?」

「わかりませんが、何か意味があるんだと思います」

「その通り、そのうちわかるさ」

 京ちゃんが首を傾げると、伊織くんがそう考察を述べた。ヤマトさんと太一さんは頷いたものの、こちらとしては納得できない。
私は大きくため息をついた後、口を開いた。『いい話』ってだけでは終わらせませんよ――?
 

「……はー、私思い出しちゃったなあ。2人が暴れまくって泣いちゃったこと」

 私はちらりと2人の方を見ながら、大声でそう言った。


「あ、あれは……」

 太一さんとヤマトさんは顔を見合わせると、諦めたように肩を落とし、こちらに頭を下げた。


『……すみませんでした』

「いえいえ。こちらこそ」

 私はにこりと2人に微笑んだ。まあ別に根に持ってたとかそういうわけではないが、どんどん喧嘩しろというのには賛成できない。あなたたちの喧嘩で、空さんたちにどれだけ心配と迷惑をかけてきたのか……。
 友情を深めるには確かにぶつかり合いも大切だが限度がある、よね?


「湊海ちゃんが……泣く?」

 私たちのやり取りに驚いたのか、大輔くんとタケルくんは言い合いをやめていた。私は2人に向き直ると、ぴしりと指をさした。


「喧嘩するのは良いけど、あんまりひどいと湊海お姉ちゃん悲しくて泣いちゃうから、程々にね」

「ちなみに泣かした場合は、ラブラモンとロップモンから鉄槌が下されます」

 飛鳥くんが両脇にラブラモンとロップモンを抱えると、2人はファイティングポーズをした。お、おお――頼もしい……。


「は、はーい……」

「……僕が泣かせるわけないでしょ、もう」

 大輔くんは冷や汗をかきながら返事をしていたが、一方タケルくんはそっぽを向いていた。まあタケルくんは自分から喧嘩吹っかけるようなタイプじゃないし、そこまで心配していないけれど。
 最近ちょっと素直じゃないのは、湊海お姉ちゃん寂しいぞ。



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