「メタル、グレイモン!」
「いや、違う……!」
ヒカリちゃんの発言に、タケルくんは首を横に振った。――確かにそれは、メタルグレイモンだった。しかし体は全体的に青色になっており、目に生気がない。
「計算通りだ……今度は思った通り進化できた……」
「アグモン!」
「太一先輩、危ないって!」
「俺だ! わかるよな!?」
太一さんはメタルグレイモンに太一さんが歩み寄ったものの、何も反応がなかった。
「話しかけてもムダだよ。もうお前のパートナーデジモンではない。僕の下僕だ。さあメタルグレイモン、完全体のパワーを見せてやれ!」
メタルグレイモンは咆哮をあげると、太一さんに向かって手を振り下ろした。
「危ない!」
避けようとしない太一さんを、大輔くんが何とか救い出す。さっきから、何を考えているんだ太一さんは――! 3年前の冒険を思い出し、胸が痛む。貴方に何かあったら、私は……。
「メタルグレイモンを止めるんだ!」
「ネフェルティモン、行くぞ!」
「ええ!」
タケルくんの号令に、ぺガスモンたちがメタルグレイモンへ向かっていった。
『サンクチュアリー・バインド』
ぺガスモンたちは光の縄でメタルグレイモンを押さえつけていく。しかしこれもいつまで持つか――。
「アグモン!」
「俺、どうすればいい?」
「どうしたらって、俺にもわかんねえよ!」
フレイドラモンは不安そう、大輔くんの指示を仰ぐが、大輔くんも何も答えられない。私もどうすればいいか、わからなかった。大輔くんは、太一さんがメタルグレイモンへ飛び出そうと暴れているため、押さえつけるのに必死だ。こんな状態じゃ、ろくな指示も出せないだろう。
「ディグモン、イービルスパイラルだけ攻撃することは出来ます!?」
「ぬう……どうだぎゃ? 的が小さいし、あんなに動き回っとったら……!」
「俺、やってみる!」
フレイドラモンはディグモンの隣に並び、構え始めた。
「よせ、やめろ!」
「危ないって!」
「アグモンを攻撃するな!」
大輔くんが冷や汗をかきながら太一さんを押さえ込んでいるが、言うことを聞く様子はない。それどころか、何とか試みようとするフレイドラモンを止める始末だ。
「だけどこのままじゃ……!」
「早く何とかしないと!」
ヒカリちゃんとタケルくんも、焦り気味に言った。この間にも、メタルグレイモンは暴れており、今にも光の縄は切れそうだ。
「もう限界です! やるだけ、やってみませんか!?」
「待て! 頼むから、ちょっと待ってくれ!」
「待てません!」
太一さんは懇願したが、伊織くんも必死に叫ぶ。これ以上は、もう……!
「待てよ、太一先輩が待てと言ってるんだから待てよ!」
「いくら太一さんの言うことでも、これ以上は聞けません!」
私は大輔くんと太一さんを押し退け、前に出た。みんなが傷つく前に何とかしないと……アグモン、ごめんね……。
「湊海ちゃ……」
「ムースモン、お願い!」
私は拳を握り、ムースモンに指示を出した。ムースモンも私の気持ちがわかったようで、しっかりと頷く。
「ええ! ホーン……!」
「ああ!」
――しかし、ひと足遅かった。メタルグレイモンは拘束を破り、胸のミサイルを開ける。
「まさか……!」
「みんな、逃げろ!」
私たちは一目散にその場から離れた。一方デジモンたちは、何とか止めようとメタルグレイモンに立ち向かっていく。
「ギガデストロイヤー!」
そしてメタルグレイモンはミサイルを発射した。空を飛べるデジモンたちは何とか避けられたが、ムースモンたちはモロに食らってしまう。
「あはははは! はははは! さすが完全体だ、呆気なくケリがついた!」
カイザーは楽しそうに高笑いを響かせた。
「メタルグレイモン、お前の力があればデジタルワールド征服もすぐ終わる! ふははははは!」
カイザーが、メタルグレイモンの頭に飛び乗っていく。お付きのエアドラモンの数体も、集合した。
「アグモン!」
「さあ行け、メタルグレイモン! 次のエリアへ!」
太一さんの声も、今のメタルグレイモンには届かないようだ。カイザーたちは進行方向の岩を破壊しつつ、去っていってしまった。
「ふははは、はははは!」
「くっそ……!」
いつまで笑っているんだ、こいつは。私は地面にあった石を拾い、ぶん投げたものの、さすがに届かなかった。本当に、許せない……。いつか絶対殴ってやる。