暗黒進化

「ああっ!」

「そんな……!」

「あれは……!」

 私たちは驚きのあまり、言葉を失う。エアドラモンに連れられ、姿を現したのはスカルグレイモンだった。
 スカルグレイモンはロープを勢い良く引きちぎり、エアドラモンを落下させる。静かに地面に着地すると、咆哮をあげた。そ飲まま目についたメラモンに攻撃を加えていく。


「な、なんだよ! あいつ!」

「スカルグレイモンよ!」

「スカル……なんだって!?」

 聞き慣れないデジモンの名前に、大輔くんは思わず聞き返す。その間にもスカルグレイモンは歩を進めていく。



「逃げるんだ……」

 タケルくんは顔を強ばらせ、小さく呟いた。



「えっ?」

「まともに戦って、勝てる相手じゃない!」

「みんな、早く!」

 しかしフレイドラモンたちは、そんなのお構い無しでスカルグレイモンに立ち向かっていく。


「ナックルファイヤー!」

 フレイドラモンの攻撃は全く効かず、スカルグレイモンのひと振りで、弾き飛ばされてしまった。


「フレイドラモン!」

 大輔くんが思わず叫ぶ。フレイドラモンはブイモンに退化してしまった。
 ディグモンが怯まず立ち向かっていくが、またもや弾き飛ばされてしまう。


「ディグモン!」

 ディグモンも、アルマジモンに退化してしまった。そのままホルスモンも続けて、攻撃を食らってしまう。


「ホークモン!」

 退化したホークモンに、京ちゃんが呼びかけた。
その間にも、スカルグレイモンは私たちの方へゆっくりと向かっていく。


「……っ、ラブラモン!」

「お任せを!」

 私がD-3を取り出すと、ラブラモンは頷いた。


「飛鳥!」

「……頼んだぞ!」

 ロップモンの呼びかけに、飛鳥くんはD-3を掲げた。


『デジメンタルアップ!』

 私たちはほぼ同時に叫んだ。――正直、アーマー体でどうにかなる相手ではない。でも、みんなを逃がすには少しでも時間を稼がなければ……!


「ラブラモン、アーマー進化! 誇り高き慈悲、ムースモン!」

「ロップモン、アーマー進化! 奇跡の盾、メイルドラモン!」

 ムースモンたちは、ぺガスモンとネフェルティモンの元へ駆け寄った。


「みんな、逃げて!」

「でもみんな一緒じゃなくちゃ!」

「デジモンたちは、僕たちが連れて行きます。安全なところで待ってて!」

「さあ、早く!」

 その瞬間だった。


「グラウンド・ゼロ……」

 スカルグレイモンが1発のミサイルを放つ。ミサイルは迂回しながら、ダークタワーの方へ向かった。ミサイルがダークタワーにぶつかった瞬間、大きな閃光が辺りに広がる。


「うわあっ!」

「な、なんだ!? あいつは……!」

 激しい光と爆風に襲われつつ、ダークタワーの方を見る。ダークタワーは粉々に砕かれ、見る影も無くなっていた。
 それらが収まると、今度はダークティラノモンの軍勢が、スカルグレイモンに向かっていく。その地響きで、私たちは上手く体勢が取れなくなっていた。


「うわっ!」

「また敵……?」

 京ちゃんが不安そうに小さく呟く。ダークティラノモンたちはスカルグレイモンを囲むと、一斉に炎を放った。


「何を、してるんだ!?」

「自分の仲間を、攻撃している……!」

 大輔くんの疑問を投げかけると、タケルくんも驚いたように目を見開いた。
しかしスカルグレイモンはその攻撃をものともせず、ダークティラノモンたちを薙ぎ払う。そのうちの1体を掴むと、地面へ投げつけた。


「つ、強い……」

「でも無茶苦茶よ、こんなの!」

 大輔くんの呟きに、京ちゃんはどうしようもない様子でそう叫んだ。
スカルグレイモンは光を放つと、小さくなっていった。いや、これは――。


「あ、あれは……!」

 ヒカリちゃんは思わず声をあげる。そこにいたのは、イービルリングを首につけたアグモンだった。あれは、進化していたのか……!?

 1匹のエアドラモンが地面へ降り、アグモンの尻尾をくわえる。そのままエアドラモンは空高く飛んでいった。


「アグモン……」

「なんだって!?」

 ヒカリちゃんの消えそうな声に、タケルくんが反応する。


「アグモオオオオン!」

「太一さんの、アグモン!?」

「なにぃ!?」

 ヒカリちゃんとタケルくんの叫びに、大輔くんも空を見上げる。



「待って! アグモンを連れて行かないで!」

 ヒカリちゃんが必死に叫ぶが、エアドラモンたちは止まらない。そのまま遠くの空へ消えてしまった。


「アグモン……」

 私は地面へ座り込んだ。まさか、パートナーデジモンにまで手を出すなんて――。今までの行動も許せないが、今回は1番最低だ。あいつは一体何を考えているんだ……!?


「……ごめん。みんな」

「飛鳥さんのせいじゃねえよ」

 飛鳥くんが小さく謝ると、大輔くんは肩を叩いて励ました。


「でも、何とかしないと……」

 空を見上げながら、大輔くんは呟いた。――いつまでも落ち込んではいられない。私も目元を拭い、すっと立ち上がった。……アグモン、絶対助けに行くからね。





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