光子郎さんが割り出してくれたエリアと、飛鳥くんの記憶を頼りに、私たちは一乗寺くんの住んでいる場所へ向かった。
「歓迎会、延期になっちゃって悪いな」
「いいよ。仕方ないさ」
向かう途中、大輔くんが申し訳なさそうに謝る。飛鳥くんは笑顔で応対した。
「また今度、ちゃんとやりましょうね」
京ちゃんは2人の肩をぽんと叩く。次の機会では盛大にやらないと!
そうこうしている内に、私たちは一乗寺くんのマンションの前までたどり着いた。
「ここか……」
「光子郎さんが書いてくれた地図によると、確かにこのマンションですね」
「うん、間違いないよ」
伊織くんの地図を覗きながら、飛鳥くんが頷いた。
するとその時、遠くからサイレンの音が聞こえた。
「これって……」
「ん? 何かあったみたい……」
私が呟くと、京ちゃんたちも反応して耳を澄ます。サイレンの音はどんどんこちらに近づいている。
「行ってみよう!」
大輔くんの掛け声に、私たちは走り出した。その現場まで行くと、井戸端会議中の奥様方の会話が耳に入ってきた。
「何か一乗寺さん宅の賢ちゃん、行方不明なんですって……」
「心配ねぇ……」
行方不明――だって!? 私たちは思わず顔を見合わせた。
「行方不明!?」
「どこへ行ったんだ……?」
伊織くんが思わず大声を出すと、大輔くんも続けて首を傾げた。
でも逆に考えれば、今まで普通に生活をしていたのがおかしいのかもしれない。デジタルワールドではあんなにデジモンを傷つけていたのに、現実世界ではちやほやされている天才少年だ。
せっかく持っているその才能、他のことに生かせばいいのに――。
「……なんだかなぁ」
私はそう小さく呟いた。みんなに認められているはずなのに、それでは満足できないのか――。