※吹雪くん総愛されで争奪戦。友情で、特にCP要素は無いです。ギャグなので若干キャラ崩壊注意。






◇ 連携技と吹雪くん






「吹雪くん、一緒に連携技の練習しようよ」
「吹雪、ハリケーンの練習しないか」

 ベンチの脇で靴紐を結び直しながら、午後の練習メニューを思い描いていると、ふいに両脇から話しかけられて、僕は顔を上げた。

「あれ、風丸くんも?」
「ヒロトもか?」
「えっと・・・・・・どーしよっか・・・」

 顔を見合わせるヒロトくんと風丸くん。僕は困った顔で頬を掻いた。ちょっとでもどちらかが早ければ、片方を断れたのに。二人ともタイミング良すぎでしょ。

「吹雪、フォーメーションの練習をしたいんだが・・・・・・、今、ダメだったか?」
「いや、ダメって訳では無いんだけど・・・」

 ふいに後ろから右肩を叩かれ、びくんと跳ね上がらせる。振り向くと、鬼道くんが眉を下げて、小首を傾げていた。うん、君もタイミング良いね。

「おおー、吹雪、今日は何かもてもてだな!」
「土方くん・・・・・・、ねえ、どうすればいいかな?」

 今度は左肩。豪快に肩を抱かれ、そちらを向くと、土方くんがあっけらかんと笑っている。助け舟とばかりに相談すれば、何かいたずらでも企むかのようににやり。

「そうだなあ〜・・・、よし、じゃ、俺とサンダービーストの練習するか!」
「土方くんまで!」
「こら、吹雪に先に声をかけたのは俺たちだぞ、土方」
「ははは、いいじゃないか! 吹雪、誰とやりたい?」
「そ、そんなこと云われても〜」

 余計に話がこんがらがるじゃないか! 困った顔で皆を見回すものの、皆、吹雪のやりたいようにやれよ、とばかりに僕の顔を見つめてくる。

「じゃあ、じゃんけんでもすればいいんじゃないか?」
「豪炎寺くん! そうだね、そうしようかな」
「よーし、じゃ、行くぞー」
「じゃん、けん、・・・・・・って、何で君も参加してるのかな、豪炎寺くん?」
「いや、俺もクロスファイアを・・・」
「豪炎寺!」

 これぞ本当の助け舟!と思ったのに、悪びれもせずに真顔でじゃんけんする気満々な豪炎寺くん。ねえ、実は君も結構、空気読まないよね・・・。

「ふーぶきっ!」
「キャプテン!」
「・・・・・・円堂、吹雪が苦しそうだ、そろそろ離してやれ」
「なあ、吹雪。オレとシュート練習しないか? な?」
「う・・・・・・」
「えー、ずるいよ円堂くん。オレたちが先に誘ってたのに」

 いきなり後ろからぎゅうっと抱きつかれ、崩しそうになる体勢を何とか足を踏ん張って保つ。隣で鬼道くんが支えてくれたから倒れずに済んだものの、キャプテン、それ、結構危ないよ。
 僕から離れたキャプテンは今度は僕の手を握って、きらきらした瞳で覗き込んでくる。うわ、僕、キャプテンのこの目、弱いんだよなあ・・・。うう、断れないよ・・・。
 でも、ちらりと視線を外すと、僕の顔をじっと見ているヒロトくんや風丸くん。こっちも断れないよ・・・。何で皆、一気に誘ってくるんだろ。午前中は別にこんなじゃなかったのに。皆、同じタイミングで同じことを思いつくってどういうこと? バラバラに来てくれたら、皆と練習出来たのに・・・。

「何やってんだよ、吹雪が困ってるじゃねえか」
「染岡くん」
「こんなに皆で取り囲んで。吹雪が可哀想だろ」

 ああこれぞ救世主。皆の注目を浴びながら、決断出来ずに押し黙る僕の手を掴んで、輪の中から引っ張り出してくれる。うう、ありがと、染岡くん・・・。

「俺とワイバーンブリザードの練習しようぜ」
「え・・・?」
「「染岡!!」」

 ああ、染岡くん、君もなんだね・・・。一人抜け駆けをしようとした染岡くんに皆の鋭い視線。うんまあ、しょうがないよね。公平にじゃんけんで決めようとしてたんだしね。そもそも何で僕、今日に限ってこんな状況に陥ってるのかな? 普段は別にそんなでも無いのにさ。

「吹雪さん、もてもてですね〜。じゃあ、これで決めたらどうです?」
「春奈・・・、何だそれは?」
「くじ引き用の割り箸です! 一つだけ赤い色がついてるので、それを引いた人が今日、吹雪さんを独占出来ます!」
「いや独占って・・・、単なる練習相手なんだけど」

 再び、皆の輪の中へ引きずり込まれた僕が頭を抱えていると、マネージャーの春奈さんが割り箸を十本くらい握り締めて立っていた。にこにこと笑う彼女はとても可愛らしいけれど、何だか変なオーラというか、雰囲気が漂っている気がするのは何でだろう・・・・・・。女の子にこんなこと云うのは本意では無いけど、笑顔が怖いよ、春奈さん。

「・・・・・・ねえ音無さん。何でそんなもの持ってるの? わざわざ作ってたの?」
「これはですね! 今度、皆さんと王様ゲームをしようと思って作っておいたものなんです! ちょうど良かったですね!」
「・・・・・・鬼道、お前の妹、怖いな」

 ヒロトくんが代表として誰もが疑問に思っているだろうことを問いかけると、満面の笑顔が返って来た。何がちょうど良いんだろう・・・。というか、春奈さんやっぱり怖い。豪炎寺くんがぼそりと呟いた言葉に思わずこくこくと頷いてしまった。

「まあ、いいんじゃないか? 公平で」
「そうだな」
「じゃあ行きますよー。一つずつ、引いてくださいねー」

 春奈さんが持つ割り箸を皆、一本ずつ引いていく。そして、掛け声を合図に同時に色がついているかを見た。

「じゃあ皆さん引きましたね? せーので見てくださいね。・・・せーのっ!」
「残念、はずれだね」
「俺もだ。吹雪、じゃ、また明日やろうな」
「俺も外れだ。当たりは誰なんだ?」
「俺じゃないぞ?」
「俺でも無い」
「オレも違う」
「・・・・・・俺じゃねえぞ?」
「え、あれ? 皆さん外れですか? あっれー? おかしいなあ・・・」

 誰も当たりはいないらしい。春奈さんがびっくりした顔をして、一人一人の割り箸を確かめて回るものの、どれも色はついていない。皆、驚いた顔をしている。そんな中、ふいにユニフォームの裾を引っ張られて、振り向く。

「あのー、これ、何だったんですか? オレ、当たりましたけど・・・・・・」
「虎丸!」
「何か皆さん集まってやってたから、前みたいに紅白戦のメンバー分けでもしてるのかと思ったんですけど」

 不味かったですかね?と眉を下げる虎丸くん。別に君は悪くないよ、紛らわしいことしてたのは僕たちだし。ただ、皆は明らかに脱力していた。散々騒いでオチがこれだと肩を落とす気持ちも解る気がする。うん、実際僕も何だか色々面倒臭くなってきた。控えめに僕の裾を摘んでいた虎丸くんの手を掴んで、グラウンドへと向かう。

「まあでも、当たりは当たりだよね。虎丸くん、一緒に練習しよ。立向居くん、キーパーお願い!」
「あ、はーい」
「え? え?」

 困った顔で何が何だか解らないとでも云いたげに疑問符を浮かべている虎丸くんを引っ張って、途中、ベンチで休んでいた立向居くんに声をかける。
 そうだ、シュート練習しよう。最近、連携技ばっかり練習してたけど、僕だって一応FWでもある訳だし。連携技進化の前にウルフレジェンド進化させようよ、僕。

「よーし、じゃあ、シュート練習しよっか!」
「は、はい」






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