幸村精市


「精市、これどうかな?」
「いいね。こっちもおいしそう」
「ホント。どうしようか?」


そろそろ帰る時間になりつつある某遊園地のおみやげ屋さんで皆に買っていくお菓子やらなんやらを選んでいた。
精市はもうお土産を選んで帰るだけ、と考えているのかもしれないけど、まだイベントがある。ちらりと伺うように時計を見ると、もう9時近くだった。
しまった、お土産屋さんでうだうだしていると時間ってあっという間に過ぎるのね。なんて考え事をしている場合じゃなかった。隣でお菓子の缶をいじる精市の腕を引っ張って外に出る。瞬間、夜空に花火が打ち上がり、二人して思わず足が止まった。いきなり引っ張られた精市は驚いた顔してたけど、すぐに私の目的がわかったのか、王道だなぁ、なんてつぶやいてた。うるさい、そういうのに憧れちゃうのが女の子の性なんです。

そんな私の心を知ってか、へぇ、と感嘆を漏らした後、意外と綺麗なんだね、なんて呟いている精市にそうだね・・・なんて返事を返して上を見上げる。


「どうしたの?」
「・・・なんでも、ない」
「えぇ?何?気になるじゃん」


はは、と笑って手を腰に回す精市。ねぇ、言わなくってもわかるでしょ。そんな意味を込めて目線を送ると案の定、わかってるよ、という声が返って来た。


「なのにしてくれないの?」
「ふふ、たまには君からってのもいいんじゃないかなって思って。」
「相変わらずの意地悪っぷりね」


そんなイヤミを送る私に少しふてくされたように口を尖らせる彼。同い年で、普段大人っぽい彼がこんな仕草をしているというのは、きっと普段の彼を知っている皆からしたら信じられないことなんだろうな。

私がいつまでもしないのが気に食わないのか、肩に顔をうずめて甘えてくる。そんなことしたって私はしないからね、なんていじわるを言ってみると、彼は案の上拗ねたふりをやめ、顔をあげる。


「意地悪だなぁ」
「どっちがよ」
「ふふ、ごめんね。じゃぁ俺もするから君もしてよ」


俺と同じことしてね、と付け加えてから唇を重ねる彼はずるい。あなたの真似なんてできる余裕ないから!


花火とxxx。・・・カップルのお約束ですよね。


(息継ぎすら許さないようなキスを真似しろと・・・。)
(なんて、ぼんやりとした頭で考える)




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