忍足侑士


「侑士何買ったー?」
「まだ買うてへんで。これとこれ、買う予定」


侑士の手元を見ると、そこには可愛らしい黄色い熊のぬいぐるみが二体。一体誰にプレゼントするのかはなんとなく想像が付いた為誰にあげるの、なんて野暮なことは聞かないさ。只、気になったのは二体だけで良いのかと言う事。うちのテニス部レギュラーだけでも8人いるのに。そう言うと、彼は既に包装された袋を取り出して、姉ちゃんとおかんはキーホルダー言うてたんや。と再び袋をしまう。私がお菓子の缶詰めを2つ手にとると、滝と樺地?と聞いてきたので頷きながら二年生はこれで良いかな?と聞くとまぁええんちゃう?と曖昧な返事。


「日吉君辺りに悪戯しようとしてた?」
「当たり」


最悪だーと笑うとお土産なんてウケ狙ってなんぼやん、とぬいぐるみにカチューシャを着けて遊んでいる。馬鹿なことやってないで決めなきゃ帰れないよ、と急かすと跡部と宍戸辺りには可愛い耳でええんや、とカチューシャを弄る彼。もしかしなくてもそれ…


「跡部にあげるつもり?」
「もち。宍戸にはこの上着でもええかなー思っとるんやけど」


ある意味センスは抜群、と返すとなにか言いたげに見つめてきた。適当に返したのばれてるかな…。絡まれないよう目線をはずすと名前を呼ばれた。


「なに?」
「俺らのは買わんでええの?」
「おそろいのって事?」
「ん」


これはー?と言っていかにもカップルが付けていそうなハートのキーホルダーをいじる彼。今までおそろいの話しなんて出さなかったからてっきりそう言うのは要らないって思ってるのかと勘違いしてた。


「自分かて言わんかったやん」
「あー…まぁ、ね」
「別にキャラやないとか関係あらへんと思うで」


侑士の、そう言う所が好きだ。何も言って無いのに、分かってくれるところ。俯き加減でうんと返す私の頭をくしゃっと撫で岳人になんか言われたら俺にちゃんと言うんやでーと笑う君に顔が熱くなった気がする。


お土産はウケ狙い、これ必須。


(おそろいのキーホルダーも、必須。)



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