日吉若


「わわわ若…」
「なんだよ」
「ホントに乗るの…?」
「だったらなんだよ」


だってここ明らかに絶叫系マシンだよね、私耐えられる自信ないよ。
そう若の腕を引っ張ると彼はふん、と鼻を鳴らしてこんなもの何でも無いだろ、と言わんばかりの顔をして予想通りの言葉を口にした。


「こんなのも怖いのか?」
「…若って意地悪だよね」
「何をいまさら。」


平然と並ぶ彼の姿に頭が痛くなってきた。こんな絶叫マシンに乗るなんて嘘だと言って欲しい。若は私が絶叫系苦手なの知ってるのに何でわざわざ乗ろうとするのか分かんないよ…。


「良いから行くぞ、マウンテン制覇するんだからな。」
「ええ!?嘘でしょ、そんなの無理だよ!」


彼の口から出た絶望的な言葉に胸が押しつぶされそうだ。気分が悪くなってきた気がする。本気で嫌だって言えば若だって乗らないんだろうけど、私が乗らないって言うと若だって乗れない訳で。頑張れ私。大丈夫、だよ。


「何ぶつぶついってんだ、乗るぞ」
「え、あ、うん」


いつの間にやら順番が来ていたようで、若に手を引かれて乗り物に乗る。ああああなんかどうしよう怖くなってきちゃっ、








「…そんなに怖いなら乗らないって言えば良かっただろ」
「だってー…」


ぐすぐすと泣く私を抱きしめながら溜め息をつく彼。ほら、泣き止め。とこつんとおでこを合わせ見つめ合う。


「だって、なに?」
「若が乗りたいって、言うから、私が、乗らない、って言ったら乗れなくなっちゃうじゃん…」
「…馬ー鹿」


リップ音を立て触れた唇と若の笑顔に涙は止まった。て言うか公衆の面前でそんな事しちゃうなんて若いつからそんな事出来るようになっちゃったの…!?


「誰も見てねーよ」


確かに周りは自分たちが楽しむのに精一杯なのかこちらを見向きもしない。込んでるからかな?でも、やっぱり恥ずかしい物は恥ずかしい訳で。飄々としている若を睨むとニヤッっと笑い信じたくない言葉を吐きだした。


「じゃあ次はあっちのマウンテンだな。」
「ー!?」


乗り物は無理せず楽しく、ね?


(嫌って言えない私の馬鹿ー!)



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