手塚国光


開園と同時に中へ入った私達は一通り乗りたい物を順に乗っていた。人気アトラクションの運転が一時停止してしまったせいで、二人で決めたスケジュールが少し狂ってしまった。どうしようか、と言う目線を送れば彼は土産でも見るか?と問いかけてきた。お土産を見るには時間が足り無いし…と考えを巡らせ、ふと被り物を売っているお店が目に入る。私の視線の先を見た彼は嫌な予感がする、と言いたげに眉間にシワを寄せていた。そんな彼の様子に苦笑いを零しつつ、一つ提案する。


「せっかく来たんだから、被ろうよ」
「…まぁ、滅多に来れないしな」


嬉々とした私に折れた彼は自分自身に言い聞かせるかのような事を言いながら頷く。彼の手を引いて売り場に近寄る。


「国光はこういうの似合う」
「ん…そうか?」
「うん、可愛い!!」
「…嬉しくない」


実に不満そうな彼。でも私にとっては、私の一言に一喜一憂する彼が可愛くて仕方ない。かく言う私も彼の一言に一々反応しては一喜一憂しているのだが。私とは違って、普段反応の薄い人間だと有名な国光にそんな反応をされると嬉しい。愛されてるなぁ、と分かる。


「…お前はこっちだな」
「え、そんな可愛いの似合わないよ」
「何を言っている、お前は十分可愛いぞ」
「そ、そう?」


照れずにさらっと言ってしまう国光はすごいなぁ、と思う。なんか国光の言葉は一つ一つに重みがあるっていうか、なんと言うか。本当に想っている事をそのまま言ってくれている感じがして恥ずかしい。いや、きっと思っている事を本当に言っているんだろうけど。だからこそ余計に恥ずかしい。


「え、えーと、じゃあ、これ、にする。」
「何故照れてるんだ」
「なんでもない!」


そう言ってお会計を済ませる私を終始不思議そうに眺めていた国光。私ばっかり恥ずかしくなるのも悔しいから、とびきり可愛い耳の奴を選んでおいた。


おそろいの被り物は王道ですよ。


(可愛いっ!写メる!)
(っ、写真は勘弁してくれ…)



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