「name、今日から氷帝学園に行くんだろ?」 「あぁ、おばさま。そうです。」
施設のおばさまに声をかけられ、荷物を整理していた手を止める。
ここら辺で有名なお金持ち学校。中学での真面目っふりと成績優秀さを認められ、特別にって学園長様が全額免除してくれたのである。本当は友達居なくていつも一人だったから、勉強するくらいしかする事無かっただけなんだけど。
…我ながらなんて寂しい理由。
仕方ないと言えば仕方ない。だって見た目からして絡みにくい格好だからな、私。可愛くも無ければ、当然おしゃれでも無く。それを更に強調している黒髪に長い三つ編みの髪。前髪はきっちりピンで止めて、丸い牛乳瓶みたいな昔ながらの眼鏡。そんな昭和女みたいな格好をしていたせいで中学の時は浮いた存在だった。
ったく。こっちだって好きでこんな格好してるんじゃないよ。でも、私にはこのスタイルが驚く位似合う。それに一人でいても別に声をかけてくるような人はいない。狙い通り中学では、誰一人声をかけてこなかった。
「ねぇ、name。本当に高校もその格好で行くのかい?」 「ええ、そうですけど?」 「その格好は、もう卒業したらどうだい?」 「良いんですよ、私にはこの格好が一番似合うんですから。」 「似合うけど、今時の格好だって十分似合うよ。」 「大丈夫。それにおしゃれってお金もかかるし。」
お金なんて心配しなくて大丈夫なのに、と言ってくれるおばさんだけど、本当は今月凄く厳しいの知っているんだ。私が気にしているのを知っていてこんな事を言ってくれるんだろう。本当におばさんには感謝している。だけど、これ以上迷惑なんてかけられない。
「それに、今度から寮に入るんだろう?」 「うん。だから夏休みくらいしか帰れないね。」 「寂しくなるわね…」 「…じゃあ、そろそろ行くね。」
あ、と声を上げたおばさんはちょっと待って、と隣の部屋に駆けて行く。戻ってきたおばさんの手には大きな紙袋が二つ。
「はい、園の卒業祝いに。」 「…これ、」
袋の中に入っていたのは、新しい洋服やアクセサリー、靴、かばん、財布やらなんやら、色々なものが入っていた。
「駄目…おばさん、私、これ貰えないよ!」 「いいのよ、折角皆で買ったんだから貰って頂戴」
園の皆で出し合って一式そろえてくれたらしい。こんなに沢山、一体いくらしたんだろう。何万としたに違いない。
「ありがとう、おばさん。皆にも、お礼言わなくちゃ…、」 「良いのよ。いつだって会えるんだから。それに、もう行かなくっちゃ遅刻しちゃうわ」
言われて慌てて時計を見れば家を出る予定時間になっていた。本当にありがとう、ともう一度お礼を言ってから荷物を持って園を出る。
幼い頃からいた園。もう自分の家のような存在。その家も今日で終わりだ。そう思うと本当に熱いものがこみ上げてきそうになる。が、今は感傷に浸っている場合ではない。また帰ってくるね、と呟き靴を翻しバス停へと向かう。
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