見なれない天井と部屋。一瞬訳が分からなかったが、思い出した。沢山の事があり過ぎて夢だったら良いのにと思いつつ、起き上がる。昨日は部屋の広さやら自分の置かれている状況やらに戸惑ったけど、今更何を言ってもどうにもならない。とにかく今日から頑張らないと。鏡の前で頑張ろう、と一言つぶやき食堂へと向かう。


「おはようさん」
「…忍足さん?」


せや、と首を縦に動かして頷く彼。割と早い時間に起きたと思ったんだけど、どうやら一番乗りでは無かったみたいで、彼は朝食をとっていた。食事はセルフサービスなのか、ずらりと並ぶ食事に目を疑う。


「これ何なんですか?」
「跡部の執事たちが朝用意していくんや」


金の無駄使いってこういう事言うんやろな、と呆れた表情で並んだ食事を見て言う。まさにその通りだと思う。他のメンバーはどうしているのかと聞くと、まだ起きてへんよ。と笑顔で返された。


「昨日から思ってんけど、自分ええ足しとるなぁ」
「………………」
「冗談や」


爽やかな笑顔のまま言われた言葉に思わず固まってしまった。冗談だと言う彼には悪いが信じられない。冗談じゃなかった。目がガチでした、忍足さん。正直言うと足フェチとかまじ無いです。どん引きしてる私を見て、慌てて弁解しようとあーだのこーだの言ってるけど、時すでに遅しって奴です。


「おはよー」
「お、じろー!」
「あれ、その子誰」


階段を下りてくる音に救われた。どうやら降りてきたのは芥川さんだったみたい。救われたと思ったのは私だけじゃなくて忍足さんもだったようだけど。それにしても開口一番がそのこ誰、は悲し過ぎる。昨日自己紹介をしたにも関わらず覚えられてないとか…。


「あ、そっか。昨日からここに来るって言ってた子か。」
「忘れてたんかいな」
「人の名前とか一々覚えてねーし」
「自分最悪やな。」


忍足さんのツッコミを適当にあしらって食事をとる芥川さん。なんだか意外とマイペースな人だったみたいだ。これから色々とお世話になるだろうし、あんまりいざこざとかなくしたいんだけど、凄く注意したい…。


「ごめんなー、こいつ寝起きこんなんで」
「寝起きだから…なんですか?」
「…んー…まぁ…?」


受け流す彼の眼は私を見ようとせず、手元のフォークを見ている。あぁ…寝起きだからってわけじゃないんですね…。なんだか皆の事を知っていくうちにどんどん先が不安になってきたんですけどこんなんで大丈夫なんでしょうか…。


「よーっす!なんだよ元気ないじゃねーか!」
「わ、吃驚した。向日さんおはようございます」


どんと肩を押され思わず肩がはねる。何事かと振り向けばそこには向日さんが立っていた。岳人でいいって、と言われたが流石に先輩に呼び捨てはちょっと、と言うと別にきにしねーよ、と言われたので岳人君と呼ぶ事にする。納得したのか、頷く彼。そういえば他の皆は制服を着ていると言うのに岳人君は未だにスウェット姿だ。


「俺はご飯が先派なの。どーせ荷物取りに上行くんだし別に着替え無くてもいーだろ?」
「まぁ、そうですけど。」
「それよりお前食事とんねーの?」
「なんか何選んでいいかわかんなくて…」
「子供かよ!」


ツッコミを入れた後爆笑され、なんだか恥ずかしくなってきた私はこの学校が並はずれてるんですよ、と必死に言うが聞く耳を持たない向日さんは、ぞろぞろと出てくるメンバーに話していくので軽く泣きそうになった。


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