01

「仁王君と苗字ちゃんって仲いいよねー羨ましいー」
「何じゃその台詞」
「クラスの女子に言われた」
「なかなか鋭い女子じゃな」
「どこがだよ」


むしろ仲悪いっつの、と机に肘をつく。今は放課後の為教室には仁王と私しかいない。だから私も安心して素を出せる訳だ。が、何故仁王がここにいるのかは謎だ。毎度の事だが私が教室に残っていると必ずと言って良いほど一緒に残る。最早嫌がらせだ。そのせいで私は仁王と付き合ってるんじゃないかとか訳の分からん勘違いをされて妬まれて嫌がらせを受けるんだから。仁王はきっとそれに気付いているからこそ、私と一緒にいるんだ。じゃなきゃこんな意地の悪い笑みを浮かべたりしない。


「ふーん、お前は俺の事好きじゃなか?」
「嫌いだって」
「つれないのー」


ムカつく仁王の態度にははいはい、と適当にあしらい窓に視線を移す。つまらん、とふてくされ始める仁王は例のごとく無視だ。それより今日風強いな。洗濯物とか飛んでそう。


「あ」
「ん?」
「洗濯溜まってるんだった」
「うわ、不潔」
「仁王そろそろ死んで」


ゲラゲラと下品に笑う仁王に足蹴りを食らわせながら暴言を吐いてから鞄を持って教室を出ると後ろから仁王も付いてきた。


「俺も一緒にかーえーるー」
「死ね」
「とかいって照れ隠ししてんのはバレバレじゃ」
「頭沸いてんじゃない?」


2人で階段を下りて下駄箱に行くと、仁王君、と呼び止められた。いや、呼び止められたのは仁王だけなんだけど、どう言うわけか仁王に腕をがっちり掴まれた。はぁ?って言う目線を送った物の仁王は全くこっちを見ずに呼び止めた相手を見ていた。


「仁王くん、いつになったら戻るんですか」
「俺の場所はそこじゃなか」
「仁王くん」
「戻る気は無い。幸村にも伝えた」
「みんな認めてません」
「知らん。行くぞ、名前」
「え、うん」


あまりに何時もと違う雰囲気に圧倒されてしまった。ピリピリとした緊張の中仁王に手を取られ前に進んで行く。普段と違う仁王は何度か見たことがあったがこんな仁王は初めてだった。あの眼鏡の人と昔何かあったのかな?そう言えば幸村君って確かテニス部の部長だよね?人違いじゃなければの話だけど。あ、て言うか思わず行くぞって言われて頷いちゃったし。私仁王と手繋いで帰ってんじゃん。はっず!


「あのさ、仁王、手離してよ」
「…あぁ、すまん」


意外にもあっさり離された手をポカンとしてしまった。いつもなら絶対離さないのに。明らかに変だ。相変わらず仁王は分かり易いなぁ。


「何かあったの?さっきの人と。仲悪い?」
「何が?別に何も。ただ嫌いなだけじゃ」


うっそだ。何もないのにあそこまで冷たくなるなんてないでしょ。これは仁王の弱みを握れるチャンスかも。興味の無いようなフリをして、さり気なくなんで嫌いなの。と探りを入れてみると、仁王の足がとまる。


「お前さんには関係なか。余計な干渉するな」


こちらを見ずに言う仁王の声は珍しく怒っているようで。そんな仁王の態度にムカついて文句を言ってやろうと思ったのに彼はそのまま走り出してしまった。


「仁王!」


名前を呼んだ物の、アイツの足の速さを舐めていた。帰宅部のくせに尋常じゃないくらい速い。アイツ何部だったの?陸上部?馬鹿みたいに足はやいんだけど。訳がわからないままその場に立ち尽くしていると、後ろからさっきの人が声をかけてきた。


「少し、お話させて頂いても宜しいでしょうか」


丁寧な口調からして怪しい人物、という感じはしないが、何となく仁王と雰囲気が似ているような気がするのは何故だろう。とりあえず、走り出した仁王の事について彼に聞きたかった所だったので二つ返事で彼に促されるがままテニスコートへと場所を移動した。


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