04

話しがひと段落した所で、先ほどの仕返しに話を切り出した。今度は仁王の苦手なジャンルで攻めてやる。


「ねぇ、仁王。私達、」
「付き合わない？」
「違うから。」


舌打ちをして後ろの扉に寄りかかる彼。もう本当にいい加減、その冗談止めてくれないかな。


「私達、青春的なのやって無いよねー、って。」
「…どういう事じゃ？」
「例えばー…部活とか？」
「お前さんが部活とか想像出来ん。」
「…あっそ…」


別に部活だけが青春じゃなか。急に目を逸らして言う仁王。こいつって部活とかの話するといっつもこうなるんだよな。分かりやすいのがワザとやってんのか、はたまた無意識なのか分かんないんだよなー。私の予想では、多分無意識。だから部活の話が仁王の苦手ジャンルだと思うんですよ。


「仁王は、中学ん時になんかあったの？」
「…忘れた。」
「はぁ？」
「もういいじゃろ、昔は。」


なんだ忘れたって。嘘付くのにももっとマシなのあっただろ。話そらすのも下手過ぎ。こいつホントに詐欺師？


「何それ、まるで触れて欲しいって言ってるようなもんじゃん。教えてよ。」
「お前さんが俺と付き合ってくれるなら教えてやらん事もなか。」
「死ね」
「いくらなんでも死ねは酷いナリ…」


だって人の嫌な所にはずけずけと言ってくのに、自分だけ言われたくない所守ろうなんてずるいじゃん。


「…今度教えてやるから、待ちんしゃい。」
「うわー。絶対後でそんな事言って無いっていうパターンじゃん。」
「そんな卑怯な奴じゃ無いナリ。」
「嘘つき」
「お前さんもじゃろ」


それを言われてはもう何も言い返せない。思わず行き詰まってしまえば、仁王はしてやったりと言う言葉がぴったり合うような顔をしやがった。マジムカつくんだけどこいつ。


「俺の勝ちじゃな。」
「馬鹿じゃないの？」
「おーそうじゃ、馬鹿なり。ただし名前馬鹿じゃ。」
「何それ寒。」
「顔赤いナリ」
「これチークだし」
「可愛くないのう」
「じゃあ可愛い女の子に言えばいいじゃん、そのへどが出るような台詞」


こんな事言うにお君は名前限定じゃけ、他の女はそんな事しなくても見てくれで釣れる。小馬鹿にしたように鼻で笑う彼の目が今までで一番冷たい目だった。ふーん、そんな眼もするんだ。なんか意外。いっつもへらへらしてるイメージあったから。


「お前さんは何でもかんでも見下してるような目で見ちょる。」
「…だって馬鹿馬鹿しいじゃ無い。」
「何が？」


作り物の笑顔と言葉に騙されるやつらなんかに興味なんか無い。付き合いだってめんどくさいだけだし下らないと思ってる。正直言っちゃえばダルイ。


「じゃあなんでそんな奴らと付き合ってるんじゃ」
「なんで…か。本当、なんでだろ。」
「自分でも分かって無いのか？」
「うーん、なんて言うか…。」


私自身、もうどれが本当でどれが嘘か分かんなくなってきちゃってるんだよね。楽しいから人を騙してるのか、それとも意味なんて無くて、ただ嘘を付いて騙してるだけなのか。偽って偽って、もうどれがホントの自分なのか分かんない。


「…中二病？」
「はぁ？それ言ったらあんたもでしょ？」
「まぁの」
「…マジムカつく。」


本当、なんでこいつが詐欺師なんて呼ばれてんだろ。