02



「おはよー」
「お、仁王じゃん。」
「なんじゃ、その珍しい、みたいな目は。」
「1限から出るなんて初めてなんじゃない?」


ばか、中学ん時はちゃんと出とった。なんて私の頭を小突く彼、仁王雅治は、私のクラスメイトでありライバルでもある。

初めて会ったのは中学2年の春。友人と遊んでいた私をナンパしてきた千石とか言うやつから助けてくれた。本来ならそこから恋とか何とかピンク色の何かが生まれるのであろうが、私の場合は違った。

なんとなく、同じ匂いがした。嘘くさい、私と同じ匂い。気になって調べてみれば、やはり彼はコート上の詐欺師なんてふざけた名前で呼ばれている、“嘘つき”だった。同じ年で、こんなに有名な“嘘つき”がいるなんて。私の理解者となりうる人間が現れた。そう嬉しくなった反面、この人は本当に私を“理解”してくれるのであろうか。そんな疑問が脳裏に浮かんだ。その疑問を解消知るために、私は高校から立海へ編入し、彼に接触した。が、とんだ期待外れだった。彼は私を覚えてすらいなかった。そこで一気に熱気が冷めたのを覚えている。

最初から彼は私に気付いてなどいなかった。私が同じ、嘘で塗り固められている人間だと、気付いていなかった。そんな人間に私を理解するなんて無理な話。それ以前の問題だった。やっと見つけたと思っていたのに。悲しいという気持ちと同時に、こんな生半可な“嘘つき”に“詐欺師”なんて、冗談でも語られていたという事実に腹が立った。

今思えばなんて自分勝手な理由で彼を敵対視し始めたんだと呆れたくなるが、まぁ過ぎた事を言っても仕方がない。

それから私の冷たい態度と突っかかるような言葉をきっかけに、彼と対立するようになった。対立と言っても、特別仲が悪い訳ではない。ただ、似た者同士だからか、お互いをいつもライバルとして見てきた。別にそれが嫌と言う訳ではない。でも、時々、彼が私の事を理解してくれる人間だったならば、と考える事がある。

他人は理解しようとしないのに自分は理解してくれだなんて、おこがましいにも程がある。そう思う人も中にはいるだろう。けど、よく考えてみて欲しい。結局はみんな、自分を理解して欲しいから相手を理解するんじゃないかって事。

だってそうでしょ?例えば好きな人に自分を理解して愛して欲しいから相手を理解して愛す。理解されなくても愛すなんてそんなの無理。人間は必ずどこかで理解して欲しい、愛して欲しいって思ってるはず。


私のはそれが少し人より大きいだけ。


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