03



「やぁ、こんにちは」
「―っ!!」


昨日、仁王の異様な反応の訳を聞くべく柳生と言う男子生徒に話を聞いた後。私の独り言を聞いていた部長さんから逃げ出した。頭の中が真っ白になったあの感覚が忘れられず、結局ろくな睡眠もとれずに学校に来る派眼になった。それだけでも随分と疲労が溜まっていると言うのに、朝学校に来てみると私の席に、その元凶が座っていたのだ。信じられない思いのあまり返事を返す事すらできなかった。


「昨日はごめんね?なんだか君の触れてはいけない部分に触れてしまったみたいで」
「いえ…その、なんで部長さんが?」
「あ、うん。昨日の件、考えてくれた?」
「…干渉しないなら、と言ったはずですが」
「それは柳生がでしょ?俺は何も言って無いし言われてない。」


にこにこと爽やかな笑顔を浮かべたままの彼の表情は昨日、最初に出会った時よりも威圧感が増していた。駄目だ、この人すっごく苦手な人のタイプだ。


「俺たちには無理でも君ならできる」
「どうして、そんな事分かるんですか?」
「同じだったからだよ。昨日の君とあの時の仁王が。」
「…逃げ出したんですか?」
「うん。それから俺には会いに来なくなっちゃった。」
「部活止めたのも部長のせいじゃないですか…」


かもねー。と何が面白いのかにこにこと笑顔を浮かべる彼。そしてまた言葉を続ける。


「まあ彼にしたのは別の質問だったけど。」
「…そうですか」
「興味無いの?彼に」
「無い訳じゃないですよ」
「ふーん?君はなんにでも無関心って柳が言ってたけど、ちょっと違ったみたいだね?」
「…何が言いたいんですか」


ふふ、とお花を飛ばしそうなやわらかな笑みでここからが本題、と言わんばかりに席を立ち向かい合う。


「協力して欲しいんだ。俺のペテンに。」
「…は?」


他の人に聞こえない様、耳に口を近づける彼に教室の女子が悲鳴を上げたがそんな事は最早頭には入っていない。それよりも、答えはイエスしか聞かない、とでも言わんばかりに肩に手を置いて来た彼に思わず身が強張り、いきなりの至近距離で彼の迫力を浴びせられ、頭は再び真っ白になる。恐怖感と言い知れぬ感情が胸をぐるぐると回っている感覚に吐きそうになっていた、まさにその時。大きな音を立てて開いた教室の扉に教室が一気に鎮まる。それと同時に部長さんの楽しそうな声が聞こえ、そのまま抱きしめられた。教室中に響く女子生徒の悲鳴をBGMに、新たに耳元でささやかれた彼の言葉に従うしかないのかという諦めと、彼への恐怖心と、…それから恐らく、


「やぁ、仁王。久しぶり、だね?」
「何やっとんじゃ、お前さん」
「何ってー…彼女と遊んでるんだよ、ね?」
「…ねー。」

「…は?」


…恐らく、このペテンへの好奇心。


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