04


とは言っても私だって大人な訳で。いつまでも子供に舐められているんじゃ、先生として示しがつかない。


「がんばるぞー、おー!」
「何をやっているんですか、先生」
「うひゃぁ!?」


びっくりして振り返ればそこには、舐められまいと決意した標的が立っていた。しまった。こんな所見られてしまったら、また舐められてしまうじゃないか…!


「そんな事やってる姿も可愛いらしいですが、コピー機の前ではやらないで貰えると嬉しいです」
「ご、ごめ…」
「別に構いませんけど…そこを退いて頂ければ。」


……冷静に怒られたー!!
舐められる所か飽きられてる…!!やってしまった…。決意から一秒もしない内に砕け散ったよ!?私どんだけ間が悪いの…!


「先生、この書類コピーするんですか?」
「え?」


すっと彼が差し出したのは私がコピーしようと挟んだ書類。そうだった。スッカリ忘れてたけど、私これをコピーしようと此処まで来たんじゃない。本来の目的を思い出し、手塚くんにお礼を言って書類を受け取ろうとすると、手塚くんはひょいと手を私が取れない様な高さまで上げた。


「ちょっと、何のつもり?!」


少し起こった口調で強く言えば、彼は静かに笑って見せる。その姿に少しだけ、ほんの少しだけドキッとした。って、ドキッとしてる場合じゃ無いわよ、私!ぶんぶんと首を振って邪念を消す。


「ふざけてないで、返してよ!」
「先生、こんな事にムキになるなんて、お子様ですね」


精一杯手を伸ばす私を嘲笑うように鼻を鳴らす彼に殺意が湧いた。少し。うん、少しだけ。て言うかこいつ、完全にこの間の事を根に持ってやがる!


「お子様に言われたくないわよ!」
「先生、上を向いて下さい」


何よ、と言いかけた口はまたもや塞がれる。あぁもう。自分の学習能力のなさに溜め息が零れる。そんな私を余所に彼はとても嬉しそうだった。


「上を向け、と言われて向いてしまう辺りが好きです」


…もう知らない。

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