その8 [ 8/14 ]

買い物に行きましょう。



結局聞いても教えてはくれず、そのままあやふやになってしまった。くそう…。


「あ、」
「どうしたんですか?」
「お茶が無い」


はぁ、と溜め息をついて買いものに言ってくる。と一言、皆に言い玄関に向かう蓮二君を引き止めて一緒に連れて行って貰える様に駄目もとで頼んだら、これがすんなりとOKして貰い、少し、いや、かなり驚いた。どういう風の吹き回しだろう。


「名無しが失礼なことを考えている確立80%」
「お、思ってませんってば!」


もう、こういうのだけは本当感が良いというかなんと言うか。とにかくバレずにやり過ごせたので胸を下ろしながら、スーパーに入って頼まれた飲み物とお菓子を買い帰ろうとしたとき、お釣りが足りない事に気付いた。蓮二君の洋服の裾を引っ張りつつ声をかけると振り返る彼。


「蓮二君、」
「ん?」
「お釣りが足りないです」
「……馬鹿」
「えー!?なんで私なんですかー!」


用件を伝えると、本当に面倒臭そうに私を見た後、レシートとお釣りをとって、俺が行ってくるから待っていろ。と再び中に戻ってしまった。あぁもう、本当にごめん蓮二君。なんで渡された時気付かなかったんだろう、本当馬鹿。とスーパーの前で謝罪の言葉を心で呟きつつ突っ立っていると、トントンと肩を叩かれた。お、なんだ?ナンパか?そんなふざけた期待をして振り返るも、そこに立っていたのは男の子ではなく数名の、いかにも柄の悪い女の子たちだった。もうなんか見るからに怪しいんですけど、この人たち。


「え、なんですか?」
「…あんたが苗字名無し?」
「…え、そうですけど…?」
「ちょっと面貸してくんね?」


リーダー的な女の子にそう言われ、思わず本人だと言ってしまった。その瞬間、いきなり腹部に強烈な痛みを感じた。何なに!?何されたの今!て言うかめっちゃ痛いんだけど!キッと睨めばもう一パンチを入れられた。ちょっと、どんな挨拶ですか。


「な、にするんですか…!」
「ちょーっと用があんだよ、すぐ終わっから付き合ってくれよ」


にやにやと嫌な笑みを浮かべながら、腕を掴まれた。嫌だ、この人たちについて言ったらヤバい。そう思うのに先ほどのパンチのせいだろうか。身体に上手く力が入らず、自力で逃げる事は出来そうも無かった。しかも運の悪い事に、周りに人はいなくて、お店の人からは見えないような角度で殴られたため、助けが来る事も声をかけられる事も無く、そのまま女の子たちにすぐ横の裏路地に腕を持たれて連れられて行く。え、これもしかして


ピンチ、ですかね?



(だ、誰か、)
(誰か、助けて…!)


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