その3 [ 3/14 ]

笑われてみましょう。



「なんかなー…」


と、昼休みに屋上へとやってきた私は一昨日までの壮絶…でも無いが私の人生を大きく変えたと言っても過言ではないくらいの出来事を振り返っていた。好きにさせてみる発言から2日が経ってしまった訳だけど、全くと言っていいほど進展がありません。そりゃあ、1日2日じゃどうにかなるなんて思ってないですよ。はい。けどさ、けどさぁ!?なんかあってもいいんじゃない?て言うか、昨日の蓮二君の対応と丸井ブタ野郎の言葉のせいで若干、若干だけど心が折れそう。キモいかぁ、キモいのか、私。いや、そりゃあちょっとは自分でも思ってたけど。なんか改めて他人に言われるとショックがデカいです。こんなんで蓮二君の事落とせるのかな。なんだか無理な気がしてきた。元々ウザがられてたし。もしかしたら本当に迷惑なのかも。あーもうヤダな、頑張るって決めたのに。こんなとこでへこたれちゃダメなのに。なんだか暗い考えになってしまっているのを一回リセットするため息を吸い込んだ。


「あー!!もー!!」
「なんじゃ?お前さん、いきなり叫びだして」
「…仁王くんか」


ドアの前に立ってお前さんの望む王子様じゃ無くて悪いのぅ、なんてくすくす笑っているのは同じクラスの仁王君だった。相変わらずイライラするな、彼。て言うかいつも学校サボってるくせになんで会いたくないって思ってるときに限って君は私に会いに来るのかな。嫌がらせなの?そうなの?て言うか今は君みたいな人と関わっていられる心の余裕が無いんだけどな、私。とりあえずこの昼休み中の屋上は今私の領地と化してるからこの後の授業をサボるなら他を当たってくれないかな。もう授業なんて乗り気じゃないし私多分さぼるから。ていうか今すぐ私の目の前から消えてくれないかな。正直仁王君のこと嫌いなんだけど、私。


「酷い言い様じゃのぅ、柳と居る時とは別人みたいぜよ」
「うるさい、どっか行ってよ」
「俺はそっけない名無しも好きじゃ」
「キモいキモいキモい。仁王君キモいよ、大分。」
「それを言われてたのはお前さんじゃなか?」
「…だから仁王君、嫌いなんだよね、私」
「残念、俺はこんな俺が大好きじゃ」


うっざ。まじうっざ。目線は合わせない様、空を見ながら仁王君に向かって罵声を浴びせる。本当、嫌い。仁王君の人が気にしてる所ズバッというの嫌い。嫌い嫌い嫌い。大っ嫌い。蓮二君なら、絶対そんな事言わないのに。だからあんたの周りにいる女は頭の悪そーな女なんだよ。あーもうウザい。本当どっか行ってよ。


「褒め言葉として受け取っておくぜよ」
「どこをどうやって褒め言葉として受けとんだよ」
「プリッ」
「また訳分かんないこと喋ってるし…」


蓮ニ君、今何やってるのかなぁ。呟いた言葉は仁王君にも聞こえなかったのか何も言われず、そのまま沈黙が訪れた。なんだか上手く行かないもんだなぁ。なんで私嫌いな仁王君と此処にいるんだろう。なんで隣に柳君がいないんだろう。叫んだら来てくれるかな?いや、ウザいだけか。それに今の私を見られたらもっと距離が遠くなる気がする。あーあ、上手くいかないな、本当。でも、諦めるのは嫌。出来ることをやり切らないで諦めるなんて絶対、嫌。だからどんなにウザがられたって、頑張らなきゃ。こんな所で、挫けたくない。しかも、こいつなんかの前で。


「おっと、噂をすれば旦那の登場か?」
「誰が旦那だ、誰が」


嘘、ほんとに蓮二君?バッと振り返って仁王の方、つまり入口の方を見ればそこには愛しの蓮二君が立っていた。近付いてくる蓮二君になんで此処が分かったんですか?なんて聞いてみたらポカリと頭を叩かれた。酷い、て言うか痛い。なんですか、蓮二君。私今傷心中なんで優しく取り扱って欲しいんですが。


「傷心?ふられたのか?」
「な訳無いじゃないですか。蓮二君以外に好きな人なんていませんもん」
「じゃあなんで…」
「丸井に言われたんだと、しつこくてキモいって」


五月蝿いよ仁王、ってなんで仁王が知ってんのさ、それ。可笑しくない?私誰かに言ったっけ?それとも読心術使ったとか?ペテン師ってそんな事も出来んの?聞いてみようと思ったけど話すのが嫌だったからスルーしていると、丸井情報じゃ。と聞いても無いのに私に向かって言って来た。ウザッ。あぁ、そう。と目を見ずに言ったら苦笑いされた。


「お邪魔みたいじゃな。後は頼んだぜよ、参謀」
「…あぁ」


なんだか気まずくって私の方から目線をそらす。会いに来てくれて嬉しかったけど、今の私は酷いから、ちょっと会いたく無かった。きっと、今の私と一緒にいたら、蓮二君、私の事もっと嫌いになっちゃう。気まずそうにしていたのが伝わってきたのか、蓮二君から話しかけてきてくれた。


「…丸井に言われた事、気にしてるのか?」
「……そう、なんですかね?」


茶化して笑ってみるけど上手く笑えず困った笑い方になってしまった。あーあ。どうしよう、蓮二君も困ってるよね。こんな私じゃ、駄目なのに。俯いてしまった私に蓮二君は溜め息一つ零した後に頭を撫でてくれた。…え、頭を、撫でて…?


「名無しが元気ないと調子が狂うな」
「そ、うですか?」
「それから、気になっていたんだが、仁王とはいつもあんな感じなのか?」
「え?そうですよ、て言うか、私はもともと男子とあんまり仲良くないですし」
「…意外だった」
「え!私ってそんなに遊んでるイメージありますか!?」


いや、そうじゃなくて…。と溜める蓮二君がじれったくってなんですか?と急かしてみた。そしたら蓮二君が綺麗に笑って


一途なんだな、ってちょっと嬉しかった



(なんて言うから、私の顔は)
(簡単に赤に染まってしまうんだ)


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