その13 [ 13/14 ]

彼を虜にしましょう。



職員室を避け、誰にも見つからないようにこっそりと図書室に来てみたが、彼が素直に本当のことを話してくれるだろうか。それ以前に問題なのは、私と会って話を聞いてくれるか、と言う事か。…いや、そもそもここに彼が本当にいるのだろうか。…なんか段々と不安になってきた。
そんな不安を打ち消すように首を左右に振った後、ゆっくりと扉に手をかけていく。


「…開かない…」


なんて言うか、予想外だ。恐らく中から鍵がかかっているのであろう。必死に開けようと試みるも、扉はガタガタと音を鳴らすだけで、びくともしない。ちょ、ちょっと。嘘。マジで?マジですか?意を決してここまで来たっていうのに、それは酷くないですか。小声で開けて下さーい、と言うも全く開く様子はない。えぇー。そんな馬鹿な。


「…何やってるんだ、お前」


扉にへばりついて必死に中に呼び掛けると言う何ともお間抜けな姿を彼に、ばっちり、そりゃもうばっちりみられてしまった。なんで中にいないんですか、とは言えず。いや、とかその、とか誤魔化していると、ウザそうにどいてくれないか?と言われてしまった。あぁー、もう何やってんだか私は。


「ご、ごめんなさい。」
「授業はどうした?」
「…柳君こそ」
「…俺のクラスは自習だ」


鍵を開けて図書室へ入る彼に続いて中に入る。サボりなんて珍しいな、と本を探しながら言う彼にびくりと肩がはねた。ばっちりバレてんじゃん、私。


「…柳君、話があるんです。」
「…関わるな、と言ったはずだ。」


冷たく言い放たれた言葉に唇を噛み締める。駄目だ、まだ負けちゃ駄目だ。


「…私、まだ好きです。」
「ゲームは終わった、そう言ったはずだ。」
「…柳君、こっち向いてください、」
「ここに用が無いなら帰れ」
「…蓮二君、」
「頼む、もうその話はしないでくれ」
「私の事、そんなに嫌い?」
「…違う、俺は、」


蓮二君、私は、蓮二君にそばにいて貰えない方が辛いです。虐められる事なんかよりも、ずっとずうっと辛いです。なんで分かんないんですか。蓮二君の馬鹿。それでもデータマンですか?


「…生意気言うな、馬鹿」


私の頬を伝う涙を親指で拭ってくれた後、ごめん、なんて謝るから、もっと涙があふれてきた。


「泣くなよ」
「無茶言わないで下さい、誰のせいですか」
「相変わらずの減らず口だな、」


いっそ塞いでやろうか?悪戯にそう言って、彼は私の唇にそれを押しつけてきた。言い方は乱暴だったのにも関わらず、それは軽く触れるだけの優しい物だった。


「…すまない、酷い事言って。」
「良いですよ、私も相当うざかったでしょう?」


そう言うと、まあな、とふんわり笑う彼。あ、やっぱりうざかったんだ。内心ちょっとへこんでいると、それが伝わったのか否か。


「可愛いから良しとしよう。」
「…意地悪。」
「可愛いのは虐めたくなるんだ」
「小学生みたい。」
「男は皆ガキだからな」


こつんと彼のおでこが私のにくっつけられる。至近距離で見つめ合うとすっごく恥ずかしいんですけど。


「我慢しろ」
「鬼畜」
「好きだろ、その鬼畜さが」
「蓮二君限定ですけど」
「なら良かった。…ああ、それから


好きだ。



(そんなついでみたいな言い方しないでよ。)
(今更だろ?)
(…ですよねー。)


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