その10 [ 10/14 ]
怒られてみましょう。「蓮二君?」
「…馬鹿。」
「え」
「お前は本当馬鹿だ!」
えーなんで私が怒られるんですか。そう反論すると、連絡の一つも寄越さないで、とか、さんざん探した、とか、そもそもお前が釣りを足りない事に気付かなかったのがうんたらかんたらと長い説教が始まった。ちょっと、ねぇ。これおかしくない?なんで全部私が悪いみたいになってんですか。あの状況で連絡なんて無理な話だし、探してくれたのは嬉しかったですけど、お釣りが足りないのに気付かなかったのは蓮二君も同じじゃないですか。
「それに、」
「無視ですか!」
て言うかさっきすまないって言ってたのに態度が真逆になってるんですけど!何これ、新しい虐めですか。そうなんですか。反論しようと再び口を開こうとしたが、いきなり蓮二君の腕の中へと引き寄せられてしまい、何も言えなくなってしまった。
「心配した、」
「蓮、」
「何かあったらどうしようって、」
「…!」
「地面に押さえつけられてたお前を見たとき、頭が真っ白になった。」
蓮二君の腕の力が少しだけ強くなったのを感じて、本当に心配させてしまったのだと、心が痛んだ。ごめんなさい、と呟き蓮二君の背中に腕を回して抱き返す。肩に顔を埋めている蓮二君は短く、ん、頷く。
「ん?ちょっと待って下さい、蓮二君。」
「…なんだ?」
身体を少し離して蓮二君と見つめ会うと、不機嫌になってしまったのか、むっとした顔の蓮二君が登場。ちょ、睨まないでくださいよ。
「だから、私が怒られるのってやっぱり違う気がするんですけど…」
「気のせいだ」
「えぇー…」
全く横暴と言うかなんというか。最近ますますドS化が進んでいるんですけど、どういう事ですか。はぁ、と肩を落として項垂れると、彼は思い出したようにあ、と声を漏らす。
「どうしたんですか?」
「さっきの不良達だがな、」
「はい」
「恐らく精市がなんとかしてくれるだろうから心配するな。」
…いや、いろんな意味で心配なんですけど。とはいえず、そうですか、とだけ返しておいた。だって言える訳無いじゃない。
「というか蓮二君、」
「なんだ。」
「なんでまた抱きしめるんですか…!」
「嫌か?」
嫌な訳無いじゃないですか!じゃなくてもう、至近距離すぎてなんかもう色々と苦しいといいますか…!一言で言うと、
どういう風の吹き回しだ!(いきなりこんなんになると)
(どう反応していいか分からんのです)
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