その9 [ 9/14 ]

襲われてみましょう。



「あんただろ?柳蓮二につきまとってる奴って」
「…つきまとってるっていうか…」
「迷惑してる奴がいんだよ。悪いことは言わないから身を引きな。じゃないとあんたを痛めつけなきゃいけなくなっちまうから、さぁ」
「痛いのは、もういやですね…。でも、引く気も無いですから、私。」


なんだかよく分からない人達に連れられて裏路地へとやってきてしまった。ちょっと、これ物凄く痛いんですけど。大丈夫かな。内臓とか平気かな?なんて呑気な事を考えつつ、相手の話を聞いていると、それが気に食わなかったのか、はたまた私の態度が気に入らなかったのか。(恐らく後者だろう。)顔を殴ろうと振りかぶった。


「あっ……ぶないな、何するんですか、もう」
「!」


このまま黙って殴られるのも癪なので、避けてみせると不良の子は驚いた様に目を白黒させていた。いかにも大人しそうな外見の私からは避けると言う行動は、想像もできなかったということだろうか。残念ながら蓮二君との勝負は勉強だけじゃない。剣道とか柔道とかそういうスポーツの勝負を申し込む時もあったし。例え蓮二君と会うための口実だとしても、それなりにいろいろ練習したし。て言うか皆見かけで判断し過ぎだと思うよ。


「黙りな。…ちょっと油断したよ、喧嘩なんて出来そうにない奴だって聞いてたからさぁ。」
「聞いた?誰に…」
「そりゃ、柳蓮二のファンの奴らに決まってんだろ?」
「……なるほど」


よくある王道パターンですか。で、まんまと私はその罠に引っ掛かってしまったと、そう言う訳ですか。めんどくさい事起こすの好きな人って多いんですね。大体そんな子として蓮二君が喜ぶ訳無いのに。本当に好きだったら自分たちもそうすればいいのに。


「ごちゃごちゃうるせ―よ。良いからさっさと殴られろよ!」
「お断りします…!」


尚も殴りかかってくる彼女らの攻撃をかわしながら、なんとか逃げれないかと試みるも、出入り口は不良さんが塞いでいて出る事なんて出来やしない。ああもうめんどくさいな!


「、よけんじゃねーよ!」


イライラしているのかそんな事を言い出した不良のリーダー。自分から殴られに行くなんてどこの馬鹿ですか。相当なMじゃない限りありえないでしょう。


「うるせーな!良いからさっさとくたばりな!」
「だから、お断りしますってば!」


なんて、余裕をかましているものの、3人相手に一人では分が悪すぎる。それに段々疲れて来た。ヤバいな、最近全然運動してないから、身体の動きが鈍くなってる上体力がない。疲れて来たせいか足がもつれて体制を崩してしまった。そんな絶好のチャンスを相手が見逃すはずもなく、すかさず地面に押さえつけられる。と同時に下品な笑い声が聞こえてくる。


「ようやく静かになりやがったか!」
「手こずらせやがって…!」
「避けられた分しっかり殴ってやるよ!」


グッと髪を掴まれて無理やり顔を浮かせられると、そこには不良のリーダーが拳を大きく振りかぶっていた。もう駄目だ、と歯を食いしばり目を瞑るも、不思議と痛みは感じず、変わりに聞きなれた声が聞こえて来た。


「何をしている」
「柳…!」
「質問に答えろ」


いつもより低くドスの利いた声に驚いた。普段、他の人には優しげな笑みを浮かべ続けている蓮二君からは想像もできない。そして何より、恐らく私の為にこんなに怒っているのであろう、という事に驚いた。不良たちも驚き戸惑っているのか暫く固まっていたが、責められた事により舌打ちをして走り去って行った。呆然とその姿を見ていると、目の前に手が差し出された。


「…あ、ありがとうございます。」
「…名無し…」


…すまない



(大丈夫と笑って返すとけど)
(蓮二君は益々泣きそうな顔をした)



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