▼未來の彼がやって来た!シリーズ


いつもの昼下がり、愛しの彼とのんびりと過ごしていた処何故だか分からないが、気づいたら大きくなった日吉君(なんとなく若と呼ぶのは気が引けた)が其処にいた。一体どう言う事?そう尋ねるとこっちが聞きたい、と返されてしまった。全くその通りである。病院に行こうとも考えたし、誰かに相談…とも考えたが下手に事を大きくするのもどうかと思うし、何よりこれを一体どう説明すればいいものか。とりあえず様子見、と言う事で落ち着いた。


「日吉…君、は今お幾つなんですか?」
「なんで敬語なんだよ。別に普通に話せばいいだろ?」


まぁ、確かにそうなのだけれど。幾ら同じ年だと言っても、今の彼は見た目からして20は超えているだろう。明らかに年上の彼を目の前にすると、どうも敬語になってしまう。


「で、いくつか、だったな。22だ」
「えーと、私達が今17だから…5年後の世界から来たってこと?」


そうなるな、と静かに頷く彼。なんだか妙に落ち着いている彼の様子に疑問の念を抱く。普通だったら冷静を保てなくても可笑しくはない。少なくとも、私だったら間違いなく冷静さを失ってしまうだろう。若は私よりも落ち着いている人だと思うけれど、普通だったら少し位慌てても言いはずなんだけど…。


「日吉くん、なんでそんな落ち着いてるの?」
「………」


思い切って聞いてみるもやはり、日吉君の反応が明らかに可笑しい。どうしてそんな反応するの。と、ここまで来てようやく、一つの答えが浮かぶ。もしかしたら日吉君は、自分の意思でこっちに来たんじゃないか、と。でも、一体どうやって来たのだろう?どら焼の好きなネコ型ロボットじゃあるまいし、そんな方法…なんて考えたが、目の前にいる大人な彼を見て、その可能性を完全に否定出来無い事に気づく。だって私は未来の世界を知らないんだし、もしかしたらそっちの世界では過去や未来に自由に行く手段が在るのかも知れない。


「さぁ、どうだろうな?」


彼は楽しそうに笑った。そんな楽しそうに笑わないでよ。私は頭の中を整理することで精一杯なんだから。日吉君、と呼び掛けると、名字で呼ぶなよ、と彼はムッとした様な顔をする。まぁ、確かに恋人に名字で呼ばれるのもなんだか変な感じだ。


「それで、さっき言いかけた事は何だ?」


そう言って日吉君が急に顔を近づけて来たものだから恥ずかしさの余り、退け反ってしまった。それが可笑しかったのかなんなのか、ジリジリと近づいてくる未来の恋人に只顔を赤くさせる事しか出来無い私。


「何恥ずかしがってんだ?」


そりゃ大好きな人の少し…と言うかかなり色気が出てて更に格好良くなっていたら誰だってこうなるに決まってるじゃぁ無いですか!と、また無意識の内に敬語になってしまっていたが今度は咎められなかった。その代わり、とんでもない言葉が飛んできた。


「…可愛い」


か、可愛い?かわ、可愛い!?あの、日吉君が、可愛いって言った?そんな台詞付き合ってて初めて言われたかもしれない。その言葉に更に顔が熱くなるのを感じたつつ、5年も経つとそんな事をさらりと言える様になってしまうのか、と残念な様な嬉しい様な複雑な気持ちを持て余していると、クスリと笑う日吉君が、一言。


「照れ隠しするのは変わって無いな」


勝ち誇ったような、そんな目が私を捕らえる。彼の瞳に映っていた私の顔は、まるでこれから狩られる獲物の様でなんとも言えなくなってしまった。







(あぁ、まさにその通り)




***
12.01.26
エロい日吉ってどうすれば…。

お題 確かに恋だった様より



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