▼未来の彼がやってきた!シリーズ


憂鬱だ。ものすごく。
なぜこんなにも憂鬱なのか、というと。実は先日行なったテストがやばかった。この場合のやばかったは本当のヤバイだ。壊滅的の方の、やばかっただ。特に数学のテストが壊滅的だった。それが一番の憂鬱の原因と言っても過言ではない。が、その他にも憂鬱の原因がある。実はこのテスト、片思い中の彼に見られてしまったのだ。しかもよりにもよって、このテスト。
最悪である。帰り道の歩道橋で重い溜め息を吐き出しながら手すりに寄り掛かる。こんなやばいテストじゃなければ全然平気だったのに。しかも私の格好がガリ勉少女、といったような格好なもんだから誰もが勉強デキる女だと思っているだろう。実際、自分で言うのもなんだがいつもは学年トップ3には入る。それがなぜだか今回はこんなひどい結果。なぜだか、なんて言ったけれど、私には原因が分かっていた。多分、原因は彼。歩道橋の下を走る車を意味もなく見つめていると、不意に声を掛けられた。


「憂鬱そうじゃな?」


聞き覚えのある声に弾かれたかの様に振り向けば、そこには見覚えの無い人。一瞬先程まで考えていた彼が話し掛けて来たのかと思ったが、そんな上手い話があるはずない。しかし声は聞き覚えのある、同じクラスの、彼の声にそっくりだった。しかし私よりも幾らか年上に見えるし、本人…という事はないだろう。では目の前にいるこの人は一体誰なんだろう?…まさかとは思うけどナンパとかではないよね?こんな地味女にナンパなんてする訳が無いし。


「あの、どちら様ですか?」


自分で考えていても拉致が明かないので思い切ってそう尋ねると、彼はククク、と喉の奥で笑う。その仕草、見れば見るほど彼に似ている。


「分かってはいたが、分からんか?」


その挑発する様な言葉、相手の心を見透かしている様な鋭い目、この時点で、なんとなくわかった気がした。でも、なぜ?今まで何の関わりもなかった私に突然話し掛けてきたの?そしてその大人びた姿は一体?考えれば考える程訳が解らなくなってきた。降参、と言わんばかりに首を振って分からない、と答えると彼は少し残念そうにそうか、とだけ答える。どうしてそんな残念そうにするの。貴方は一体誰なの?


「言わん方が、楽しいじゃろ?」


そんなの、ずるいわ。そうも思ったけれど、上手く言えず結局彼はそのまま去ってしまった。一体彼は何をしにきたのだろう?それとも彼は本当に彼なのだろうか?疑問ばかりが重なり、答えは出ない。せめてヒントだけでも置いて言ってくれればいいのに。彼の後ろ姿を思いながらそう呟くと、彼が降りていった、反対側から同じクラスの、彼が上がって来た。瞬間、私の時間が止まる。金縛りにでもあったかの様にその場から動けなくなり、呼吸すらままならない。やましい事など在りはしないのに、どうしてだろうか、変な汗が出てくる。心臓が、まるでマラソンを終えた直前のように、全身に血を巡らせている。バクバクと鳴る心臓の音と裏腹に頭が痛くなってくる。


「おい、大丈夫か?」


なんて事だろうか。彼に話し掛けられてしまった。信じられない、と言った様に目を開く私に彼はいつもの様に喉の奥で笑う。さっきの、彼と同じ様に。まじまじと彼を見る私に苦笑しながらそんなに見つめられたんじゃ、視線だけで溶けてしまいそうじゃのぅ。なんて、冗談がお上手ね。私なんかに見られた所で気持ちが悪いだけだわ。


「お前さんはよく自分を皮下したがるのぅ」


どうしてそんな、私の事をよく知っている様な言い方をするの?私は単純な女だから勘違いしてしまうわ。思わせぶりな態度は止めて頂戴。そう思うのに心は素直な物で、やっぱり私は素直に喜んでしまっていた。あぁ、毎度の事ながら単純な自分が嫌になるわ。


「family、御前数学のテストだけ悪かったようじゃな?」
「どうして知っているの?」
「実験したんじゃ」


実験?なんだか嫌な予感がするわ。私の勘が正しければ、


「御前の思っとる通りじゃよ、俺は数学の授業だけある事をした」


あぁ、やっぱり。そして私はまんまとその実験台にされてしまったのね?詐欺師さん。


「眼鏡属性って、本当じゃったのか」
「そんな言い方しないで欲しいわ」
「俺が掛けていたから、って言った方がええかのぅ?」


彼は私が思っていた以上に意地悪な人だったみたい。彼の言葉に息を呑むと、予測通り、と言わんばかりの表情で話を続ける彼。何の為にそんな実験をしたのよ、と問いたかったが、私は彼の口から告げられた言葉に言葉を無くしていた為、出来なかった。今、なんて?


「じゃから、御前さんが俺を好きなんか確かめたかったんじゃ」





(冗談?だったら私ここから飛び降りてもいいわよ?)
(安心せい、本気じゃ)





***
12.01.25
未来要素どこだ。

お題 確かに恋だった様より



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