▼所詮貴方は王子様


一番近くにいるのに、貴方のその瞳は私を見た事は無い。


「…それなんて歌?」
「歌詞じゃないっての!」
「冗談だって」


あーあ、と溜め息を吐きだす。
小さい頃から一緒にいた幼馴染は最近恋をしているのか、ぼんやりとしてはまた溜め息を吐きだすと言う事を繰り返し行っている。女子か!と思わずツッコミそうになるが、敢えてここは黙っていようじゃないか。


「それ只絡まれるのがめんどくせーだけだろ」
「まぁ、そうとも言うね!」


お前なー、と苦笑いする宍戸は良い奴だ。伝える事が怖くて踏み止まっている癖に伝えたくて苦しくて仕方ないと言う何とも自分勝手な私の悩みを仕方ないな、と言って聞いてくれる。勿論宍戸が無条件で聞いてくれてる訳じゃないって知っている。きっと彼は…。


「ごめん」
「なんだよ唐突に」


何と無く。笑いかけると同じ様に笑いかけてくれる宍戸。ごめんなさい、なんて。本当に思っていたらこんな風に相談する事なんて無いんだろうけど。そう頭の中でぼんやりと考えながら、馬鹿だなぁと呟く。意味が分かってるのか分かっていないか、宍戸も本当な、と返してくれた。


「やっぱ跡部、好きな人いるのかなぁ?」
「さぁな」
「なーんて、例え居なくっても私はお姫様じゃないからきっと跡部とは釣り合わないんだろうけどさぁ」


まぁ、お前じゃ無理だなー。と笑い飛ばす宍戸を軽く叩く。どうしても手に入れたい訳じゃないんだ。ただ、もっと近くにいたいだけ。跡部の一番近くに。普通の女の子には成りたくなかったんだ。あぁでも、それはもう無理そうだ。


「あーもう、私の人生設計がぐっちゃぐちゃだよー」
「お前の人生設計なんて最初からぐちゃぐちゃだろ」
「君ねぇ…」


言っていい事と悪い事が。そこまで言いかけて宍戸がいつになく真剣な表情で見つめてきている事に気づく。はっとして目をそらす。


「いいじゃねぇか、決められたもんに沿って行くだけなんてそんなの詰んねぇだろ?」
「…まぁ、ね」
「当たって砕けて来いよ」
「簡単に言うなよ、宍戸」


そう言って部室から出て行く。なんとなくコートを見て、あの後ろ姿を探してしまうのはもうどうしようもない癖なんだ。きっと今頃あの子と帰ってるはずだから、ここにいないと知っているのに。


「当たって砕けるには少し遅かったんだよ、宍戸」


だってもう私はさっき跡部の恋を手伝ってきちゃったんだから。







(釣り合わないって理解してるから)
(せめてこのポジションだけは、)


***
12.05.10
リクエストありがとうございました!
なんか主人公ビッチみたいになってしまった…




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