恋は砂糖でできている



甘い恋愛がしたいだの、うんとイチャイチャしたカップルになりたいだの言ってる人をよく見かけるが、私はそんなのになりたいなんて思った事、無い。

いや、正直にいえばそう思った時期もあったがそんなのはもう過ぎた事で今はそんな事思ってない。

きっとこれからも無いと思う。だって恋なんてモノは一時の気の病に違いないから。感情に流されて私らしさを失う位なら、恋愛なんてしなくていい。恋愛なんて必要、無いのよ。

それに彼には私に恋愛感情なんてモノ無いんだから。可愛くも無く、地味なクラスの背景として生活しているような私なんか、人気で優しいクラスの中心にいるような存在の彼にはきっと見えて無いんだろう。例え存在を分かって貰ったって、彼の恋愛対象に私が入っている事なんて無いし、そんなのあり得ない。

だから恋愛なんてするだけ無駄。くだらないんだ。そう思い続けたまま季節は冬の終わりまで来ていた。

いつも通り帰りの支度をしていると、彼が私の横を通った。部活の帰りなのだろうか、ジャージ姿で校内を歩いている彼は、制服の時の優しい感じはなくなり空気がピンと張り詰めるような、独特の緊張感を醸し出していた。さすがは立海のテニス部部長。あ、でももう部長じゃないのか。

ぼんやりとそんな事を考えて教室を出て行こうとしたら、急に幸村君に腕をひかれた。腕をひかれるなんて事想像もしてなかったし油断しきっていたから、私はバランスを崩して幸村君の方へ寄りかかるような形になってしまった。信じられない。あの幸村君がこんなに近くにいる、なんて。大丈夫?という声が頭上から聞こえはっと我に返り幸村君から距離をとろうとしたけど、幸村君は私の手を離してはくれなかった。どうしよう、と戸惑っていたら幸村君が口を開いた。


「急に引き止めてごめんね、あの、俺苗字さんに言っておきたい事があるんだ」
「…え、あ、はい、」


全く理解できない状況に軽くパニック状態の私には、ちゃんと話すことなんて出来る訳も無く、そんな生半可な返事を返すので精一杯だった。幸村君はそれがなんだか面白かったみたいでクスリと爽やかな笑顔でありがとう、と言う。私は何にもしていないのにありがとうなんてなんだか変な気分だ。でもそんな事幸村君に言える余裕なんか今の私には全くなかった訳で。幸村君はそんな私を見て楽しんでいるような顔で(多分、実際楽しんでるんだろうけど、)質問をしてきた。


「苗字さんって好きな人とか居る?」
「…!?」
「あはは、そんなに吃驚しないでよ」


唐突過ぎるよ、幸村君。というか、幸村君が私の好きな人の名前なんて知ってどうするんだろう。そもそも私の好きな人は君なんだけど。あ、違う、私に好きな人なんていないんだった。自分で決めたのにもう忘れそうになってしまうなんて、どんだけ意志が弱いんだろう、私。


「好きな人なんて、いないよ?」
「よかった、じゃあさ」


私の言葉に安心したような表情を見せた彼は案の定言葉でも喜びを表現した。が、後に続く言葉に私は茫然としてしまった。


「俺の彼女になってよ」


言われた意味が理解できずに私はその場に立ち尽くす。
彼は今、なんて言った?私を幸村君の彼女に?私の耳はどうかしてしてしまったのか?それともこれは夢なのだろうか?思わず自分の頬をつねるが痛みは確かにあって、コレが夢ではない事が分かった。


「ど、どうして?」
「好きだから。苗字さんの事」
「…嘘だよ」


私が俯いて彼に言えば、微かに笑っているような声が頭上から聞こえてきた。私の顔は下を向いているから幸村君の顔を確認できない。でも、幸村くんのその笑い声はお気に入りのものを見ているときみたいに優しくて、不覚にもどきりとした。


「君も俺のこと好き…違う?」
「ちが…うよ」
「どうして目を見ないの?」
「…」


駄目だ、彼には嘘なんて通用しない。あぁ、もうどうして?折角諦めようとしていたのに。やっと彼を眼で追わなくなったのに。恋なんてくだらないと自分に言い聞かせる事が出来てきたのに。私の決心は一体何だったんだろう。


「そう、…でも君のその意地のせいで目の前にいる俺を取り逃してしまうけどいいのかい?」


良い訳無い。全然よくないよ、良くない。だって、私だって好きなんだもん。私だって君の事、好きなんだもん。でもせっかく決心して諦めたのに、相手から好きだって言われたから付き合うってどうなんだろう?
なんて都合のいい。でも、幸村君の言う通り今素直にならなければ彼とは付き合えない。私はどうすれば良いんだろう。なんて、答えはもう出ているのに私の中で安いプライドが葛藤していた。
その時だ。腕一本分空いていた距離が彼に引き寄せられて埋まってしまった。優しく、付き合ってくれないの?なんて言われてしまえばもう、おしまい。
私の中で葛藤していた安いプライドなんかあっと言う間に消えてしまった。そうだ、こんな意地さっさと捨ててしまおう。彼とだったらきっと、お砂糖みたいな恋だって


もしかしたら、ありかもしれない。


(…私も好きです。)
(うん、ありがとう。)


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お題、確かに恋だった様


2011/02/10 何が書きたかったか忘れた







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