白石拍手1
「白石君って、好きな人居るのかな?」
「………何やねん、その台詞」
だってクラスの女の子に聞いてきてって言われたんだもん、と可愛い子ぶって言えば、きしょいわと軽く叩かれる。呆れたように溜め息を吐く蔵は、部誌に書き始めた。ちょっと、質問に答えてよ。と言えば面倒くさいと言わんばかりに私を見てきた。仕方ないじゃん、頼まれちゃったんだから。それに蔵の好きな人とか私も興味ある。
「相変わらず変なとこ律儀やなぁ…。まぁええわ、好きな子やった?そんなん居らん」
「嘘だ」
「ちっ」
ちょ、舌打ち。今舌打ちしましたよこの人。信じらんない。何で舌打ち何てするのさ。酷い。
「構ってやってるだけでも有り難く思えや」
「蔵いつからそんな性格悪くなっちゃったの」
「お前が隣のクラスの男子と付き合ってから」
「はぁ?」
「…なんやねん」
いや、それまるで私の事好きみたいな言い方じゃーん。と茶化してみるも逆効果だった。マジな目をして、せやで好きや。とか言い出す蔵のせいで、顔に熱が集まるのを感じた。嘘、どうしよう。ごめんね彼氏君。私浮気してしまう予感がします。
「別れて、俺と付き合おう?」
蔵にこんな事言われて、無理っていえる人、私の目の前で実際にやってみて。
悪い女だと分かってる、けど一度その気になってしまえばもう止まらない。友人と彼氏には後で謝ろう。
こくんと首を縦に振れば蔵の唇が近付く。
目を閉じた私が最後に見たのは嬉しそうな蔵の顔。
堕ちる。
(さよなら)