電話越しに



カリカリ、カリカリ。
リズムよくノートに数式を書いていく。

只今の時刻は11時45分。
何故こんな時間に勉強しているかというと、この間の中間テストが素晴らしく悪かったせいだ。なんとか頑張って点を取らないと内部進学が危ないらしい。
私はテニス部のマネージャーなのだが、部長兼恋人の精市に怒られてしまった上、テスト終わるまで名無しは部活停止ね。と言われてしまった。(なんてこった。)
私が部活に行かないと練習がいつもより厳しくなるらしいので赤也とブン太が泣きついてきた。確かに可哀相だ。(泣きじゃくる二人がなんていうか、本当可哀相だった。)

そんな訳で私は遅くまで勉強を頑張っていると言う訳である。
休まずカリカリとひたすらペンを動かしていると、不意に携帯電話が鳴りだした。
誰からだろう、携帯を手に取るとそこには我らが部長様、精市の文字があった。


「もしもし?」
「ワンコールで出てよ」


そんな無茶な。
そう言って顔をしかめると笑いながら謝る声が電話越しから聞こえた。


「冗談だって。怒んないでよ」
「怒ってはないけどさ」
「ちょっと心配だったんだよ、名無し、頑張り過ぎる事が多いからさ」


やっぱり精市には敵わないな。
ペンを一旦置いて伸びをすると、図星?と言う声が聞こえてきた。
まぁね、と答えるとやっぱり。なんてちょっと心配そうな彼の声が聞こえてきたもんだからちょっと申し訳なくなった。あぁ、迷惑掛けたくないのに、もう。


「ねぇ、名無し」
「なぁに?」
「もう少し俺を頼ってもいいんだよ」
「………」
「名無しはいつも、一人で頑張ろうとするから」
「…それ、精市もでしょ?」
「うん、それよく言われる」


精市の言ってる事が矛盾していてなんだか面白くなってしまった。
何笑ってるの、と言われてしまったけど、面白いものは面白い。


「俺もさ、よく頑張っちゃう事多いけど、名無しには結構甘えてるんだよ?」
「嘘だぁ」
「本当だよ。…だからね、名無しも俺を頼って?」


ね?、なんて言われてしまったらもう頷くしか無いじゃないか。あ、でもこれ電話だから見えないや。何やってんだか。

自分にツッコミを入れているとだから、と精市は言葉を続ける。何だろう、嫌な予感がする。


「とりあえず、明日からは俺が勉強を教えてやるからさ」
「うわーい、嬉しいなー。」
「棒読みだよ?」


予感的中だった。思わず棒読みで返してしまったじゃないか。
何が嫌だって、精市の教え方、上手いけど勉強に集中できなくなっちゃうんだもんな。横顔格好いいなぁ、とか、睫毛長いなぁ、とか考えちゃって。それなら一人でやった方が集中出来る。


「そりゃぁ、どうも。俺は名無しの方が睫毛長いし、可愛いと思うよ」
「ちょ、恥ずかしいよ」
「名無しが先に言い出したんでしょ?」
「…そうだけど、」


自分が言われるのは変な感じがするんだよ。と言ったら、精市はふふ、と笑う。
それから、私はちょっとだけ間を置いてからまた喋り出した。(今の間は、これから口にする勇気を溜める間、だったりした。)


「…ね、じゃあ本当の事言ってもいいかな?」
「いいよ、言って?」


…本当はね、今すぐ会いたい


(っていうと思って、下まで来ちゃった)
(えぇ!?)
(あはは、ちょっと出てきてよ)


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2011/01/31 この人何時でもマイペースな気がする






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