あなただから恋をした



時々思う。手塚君は、何で私と付き合ってるんだろう、と。

去年の4月に想いを伝えた私は、完璧に振られると思ってた。中一年の時からずっとずっと好きだった。たまたまテニスを小学校からしていた事をキッカケに仲良くなって、気付いたら好きになっていたと言うありきたりな展開だ。同じ部活だった事もあって、彼の告白現場も何度か目撃していた私は、正直告白するのも躊躇っていた。理由は簡単で、手塚君の振り方が酷いから。彼自身はそんなつもり無いんだろうけど、告白した女の子はいつも影で泣いていた。
きっと私もそうなるんだろうな、って覚悟してたんだけど、手塚君は二つ返事でOKしてくれた。けど、私は彼から好きと言って貰って無いから彼が本当に私を好きなのか気になってしまう。こんな事言うとウザイ女になってしまうから、嫌われてしまうから、とずっと逃げてきた。でも、私はもう逃げたくない。


「ねぇ、手塚君」
「…なんだ」
「あの…えっと…」
「ん?」


思っている事を上手く伝えられないのは昔からで、手塚君をいらつかせてしまうと思うと、やっぱり何でもない。と自分の気持ちを言わずに終わってしまう。それが分かっているのか、言いたいことがあるなら言えばいいだろう?と真っ直ぐに私を見て言う彼。


「う……えと…」
「…とりあえず、家に入れ」
「あ、うん。お邪魔します」


考え事してて気付かなかったけど、いつの間にか彼の家に着いてたのか。

今朝、たまたま勉強の話になって、理科が分からないと言った私に勉強を教えてくれるらしいので、手塚君の好意に甘えてお家へ行く約束をした。勉強もできる彼は本当に完璧だ。


「…えと、ごめんね、なんか、折角の部活の休みの日なのに、勉強なんかに使わせちゃって…」
「…別に俺は気にしていないが?」
「そ、そっか…」


言いたかったのはそれか?と眉をひそめられて小さくごめん、と呟く。溜め息をこぼした手塚君はそっと手を握ってきた。…手を握って…えぇ!


「そんなに驚かれると、傷つくな」


やわらかく笑う手塚君はいつもと雰囲気が違う気がした。ど、どうしよう。こんな手塚君どうすれば…!あわあわと困っていると、今度は少し落ち込んだ様におでこを合わせてきた。もう勘弁して下さい…。


「それとも、嫌だったか?」
「ちが、うよ!」
「そうか」


また、ふんわりと笑う手塚君。なんで急にこんなやさしいの。頭の中ごちゃごちゃしててなんも考えられない。手塚君のせいだ。


「俺は、お前が好きだ」
「…う、え?」
「ちゃんと言ってなかった、だろう」
「そ、うだっけ」


私がとぼけて居る事なんてきっとお見通しなんだろうな。でも二人っきりの時に言うのはずるいよ、手塚君。私の逃げ場がないじゃない。そんな私の意志をも見透かしているのか、逃がさないと言うように抱きしめられる。


「て、手塚君、」
「名無し」
「は、はい」
「好きだから一緒に居るんだ」
「……うん」
「それだけは誤解するな」
「わ、わかった…」


そう返事をすると満足したのかスッと手を離してくれた。代わりに手を引かれ部屋へと案内される。て言うか、こんな心臓爆発しそうな状態で、勉強なんて頭に入らないよ。


あなただから、恋をした


(案の定勉強なんて出来ませんでした)


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お題、確かに恋だった様より


2011/10/28 最早祝う需要があるのかどうか。




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