会長命令だそうで。



今日はみんな大好き跡部様の誕生日、10月4日。氷帝学園で知らない人はいないってくらい有名で金持ちでイケメン、おまけに成績優秀。更に運動神経も並はずれている。そんな完璧の人って型にすっぽりハマっちゃうような彼だが、私はあまり好きなタイプじゃない。が、しかし。生徒会の書記である私はどうあがいても会長の彼と話さなければならない。俺様とか雌豚とか言ってるナルシストもぶっちゃけ嫌いな私はもう話すことはおろか顔を合わせるのもきついのに。そして彼の周りをうろついているミーハーな女子たちもあまり…というかだいぶ、好きではない。この間なんて生徒会室に乗り込んできて、書類がばらばらになって大変だった。もちろん跡部が怒っていたけど、翌日にはまた跡部の周りをうろちょろしていた。一体どんな神経しているんだ。
そんな彼女らは誕生日だからどうのこうのって騒いで必死で彼の居そうな場所を探しまわっている。そんな事して何になるのと言いたくなるが、言おうものなら全校生徒を敵に回してしまいそうなので止めておく。
走り回る生徒の波にもみくちゃにされた後、なんとか生徒会の荷物置き場にやってこれた。溜め息を吐きだしつつ、段ボールをどかし中に進んでいくとそこには噂の跡部様。


「みーっけ」
「…なんだ、お前か」
「何だとは何よ」
「お前でよかった、のなんだだよ」
「あ、そ」


私が来た事になのか分からないけど、安堵のため息を吐く彼。適当に返答し、渡さねばならなかったプリントを彼に渡す。よし、これで任務は完了。くるりと靴を翻し帰ろうとすれば、セーターの裾を掴まれた。


「何?」
「…もう帰るのか?」


思わずはぁ?と言いそうになる。危ない危ない。危うく喧嘩を売るような言葉を放ちそうになってしまった。


「いや、私仕事ありますから」
「…手伝ってやる」
「ここから出れんの?」
「………」


沈黙はノーと取って間違いないだろう。自分のファンくらいなんとか出来ないんですか、キングでしょう。目線を送れば、ギュッと裾を握る力が微かに強くなっただけだった。そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでよ…。すっごく行きずらいじゃない。


「…分かった。もう少しだけね」
「膝枕しろ」
「調子のんな」


結局彼にかなわず折れた私に、さらなる注文をしてきた彼の頭を軽くはたいておいた。今日だけ、今日だけだからね。そう呟くと、彼は嬉しそうに笑った。

10月4日、昼過ぎ。生徒会物置部屋にて。


(誕生日だから特別)


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2011/10/25 遅れすぎごめんなさい。




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