三年目



この間まで子供だった彼がこんなに大きくなって、とか言う大人の感動に似ている気がする。そう言うと俺はお前の子供になった覚えねー。って眉間にしわ寄せて言う彼。私だってこんな可愛くない子が息子だなんてヤダって言うと悪かったな!なんてすぐムキになる彼は本当まだ子供だ。本人もそれを自覚してるから昔よりかは幾らか大人になったんだろう。


「名無し、あのさ」
「なに、改まって。」
「えーと、此処で言うのはもう遅い気がするんですけども…」
「はいはい、なんですか」
「本当に、俺とで良いの?」


少しだけ頭を落とす彼がどうしようもなく愛しい。本当にいまさら何だから、と笑ってあげれば彼は少し赤くなってこっちは真剣に言ってんのに!と顔を上げる。その様子がまた可愛くて可愛くて。こんな事彼に言ったら、可愛いとか嬉しくねーし!と怒られてしまうので黙っておく。くすくすと愛しさと笑いが混じった笑みを浮かべている私を不満げに見つめる彼。


「ったく、お前ホント変わんねーよな」
「何が?」
「そうやって俺をからかうの、昔から変わんねーっつってんの」


不満そうだなぁ、笑って言えば、そりゃずっとからかわれる俺の身にもなれっての!とまたムキになって怒る。そう言うとこ、岳人も変わって無いよ、と言えば言葉をグッと詰まらせたかのように押し黙った。


「わ、悪かったな!」
「後、口喧嘩で私に勝てない所とかね」
「う、うるせー!」


くそくそ、と不貞腐れた様な振りをして中学生の時と変って無い口癖を小さくつぶやく。馬鹿、とそっと手を握ればるっせ、と少し顔が赤くなる。分かりやすいなぁ、岳人は。彼の肩に頭をもたげてそう言えばだから五月蝿いっての、と優しい声色で言われてしまった。きっと岳人は分かって無いんだろうな。私が岳人のその優しい声が好きなの。


「ねぇ、」
「ん?」
「私、幸せだよ」


岳人と幼馴染だった17年間も、恋人になって3年間たった今も。結婚しよう、って言ってくれた三ヶ月前も。23年間生きてて、今が一番幸せだよ。きっとこれからも、今が一番幸せって言える時が、岳人の隣だったらずっと言い続けられるんだろうなって思う。


「…お前それ式の直前で言うなよ…」
「岳人泣いてんのー?」
「るっせ、まだ泣いてねーし!」


涙目の彼は馬鹿、お前ホント馬鹿、と泣くのをこらえてて噴き出しそうになってしまった。噴きそうになってんじゃねーし、と椅子に座る彼は照れたように顔を逸らす。それから、真剣な表情になって見上げてきた。


「俺も幸せ」
「…うん」
「ずっと、一生一緒にいような」


これからも、そう言わせてあげるから


(さて、じゃあそろそろ行きますか)
(岳人泣かないでよ)
(るっせ!娘の結婚式まで泣かねーし!)


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2011/10/13 大好きな藍様へ。三周年おめでとうございますー!もう5日も経ってしまっていて申し訳ないです…。愛だけは詰め込みました!←




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