偽りの愛にはもう厭きたよ



ままごとカップルの続き。





いつからだっただろうか。
私が貴方に恋をしていると自覚したのは。

一番初めに貴方を知ったのは柳君との会話にたまたま話題に出た彼女の噂だった。男遊びの激しい女生徒。そう聴いていた私は貴方の事を哀れな人だと思っていた。そして恐らく自分には全く関係の無い人物であろうとぼんやりと考えていた。あの日、貴方からのゲームの話を持ちかけられた時までは。驚き戸惑う私を笑い、軽い感じに考えていいよ、と楽しそうに話す貴方。その時、可哀相な人だと感じた私は、思わず首を縦に振ってしまった。恐らく、哀れな貴方を放って置けなかったというそれだけの理由だった。それだけのはずだった、のに。

貴方を知っていくうちに段々と貴方に溺れていった。深く深く、溺れて行く。もっと貴方が知りたい。その気持ちはどんどん膨らんで行き、いつしか貴方が欲しいとまで考えるようになっていた。けれど貴方は違うのでしょう?恋愛をゲームにしか感じれない。いつかあなたが言っていた言葉。今でももし、そう思っているのなら、このゲームは私の負けです。貴方に落ちて、深く溺れた私。負けを認めれば、貴方は私のものになってくれるのでしょうか?答えはきっとNO。推測でしかないが、彼女は私を自分の駒にしたいだけ。ただのゲーム。そう思っているに違いない。溺れているのは自分だけ。辛く痛いだけのこの関係に終止符を打ったのは、貴方が初めて私に唇を重ねた、今。


「…苗字さん?」


私の呼びかけには答えず、ただひたすらに泣きながら謝る彼女の震える肩を抱きながら必死に頭の中を整理する。今、一体何が起きているのだ。彼女に、キスをされた。今まで仮初めの関係だから、という理由で私は何もしなかった。手をつなぐ事はおろか、彼女に触れさえしなかった。触れたら止まらなくなりそうで、怖かったと言うのも理由だが、何より彼女が何もしなかったというのが一番の理由だ。柳君のデータにより彼女の話を色々と聞いていた私には信じられなかったが、実際彼女は必要以上に近付かない。いったいどこからあんな話が出てきたのかと噂の方を疑うほどである。そんな彼女が私に、キスをした。思考は止まり、何も考えられなかった。何故彼女が泣いているのか、何故私に今、キスをしたのか。


「…苗字さん、落ちついてください」
「…柳生、ごめん、ごめんね」
「どうして、」
「…ごめんね、私、」


ギュッと私の制服の裾を掴みながら一言一言を紡ぎだしてゆく彼女。聴き逃さない様集中して聞いていく。と、信じられない言葉が続いた。彼女は今、なんと言った?

好きになっちゃったの、柳生の事、

彼女の口から紡がれた言葉。偽りなど存在しない、本当の彼女の気持ち。そう、信じていいのだろうか。もし、本当ならば、


もう離しはしないから。


(貴方を抱きしめて、私もです)
(そう答えた少し震えた私の声に、)
(また貴方が涙するのを感じた。)


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お題、確かに恋だった様より


2011/10/11 やっと書けた!




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