愛の上に嘘を重ねて



三年生が引退して、部活の部長となった赤也は凄く忙しそうだった。部員に指示して、練習メニューを考えて。個人のスキルアップを考えたメニューは柳先輩が考えてくれていた。でもその先輩はもういない。部活の指示は真田先輩が出していた。他のチームとの練習試合を組んだり、みんなをまとめるのは部長の幸村先輩の仕事だった。その先輩たちがみんないなくなった今、それらの仕事をすべてこなさなければならない、常勝の名を取り戻す。そう呟いて練習に打ち込んでいった赤也はもう見ていられなくて。部員の為、チームの為と頑張る赤也は昔みたいにテニスを楽しんでやっているとはとても思えなくて仕方がなかった。

たまたま遊びに来ていた丸井先輩にその事を打ち明けると申し訳なさそうに笑って、そうだよな、ごめんな、って丸井先輩が悪い訳でもないのに謝ってくれて、思わず泣いてしまった。頑張る君は好き。でも今の赤也は見てられないよ。そう思うのに、いざ君を目の前にしてしまうと思うように喋れなくて、頑張ってね、なんて、そんな言葉しか出てこない。もう赤也は十分頑張ってるのに。もう頑張らなくていいんだよ、って、そう言ってあげたいのに、何故か言葉にできなくて。真剣にプレイする君を見る事しかできない自分はなんて無力なんだろう。

そんな不安な気持ちを抱えたまま、時間だけが過ぎてゆく。どうすればいいんだろう、そう悩んでいた時、いきなり赤也に呼び出された。


「名無し、ごめん。別れよう」
「…え…?」
「俺、部活にばっかで…名無しも詰まんないと思うし…ごめん」


申し訳なさそうに俯く君にもう何も言えなかった。別れたくなんかない。私は今のままで構わない、そう思うのに、心とは裏腹に、私の口はいいよ、と動いていた。今までありがとう、なんてどこかの漫画の言葉みたいな事を呟いて行った君はもう、振り向かなかったみたい。それでよかったのかなんてそんなの知らないけど、部活で優勝出来たって聴いたし、それが一番良かったんじゃないかなって思う。


もちろん、本当の気持ちじゃないけれど。


(どこかの漫画みたいに)
(私がいないと勝てない、)
(だったら良かったのにな)


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お題、確かに恋だった様より


2011/10/10 赤也はもっと可愛いよね…。




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