雨の中待つ君を



ザァザァと降り続く雨の中、傘を忘れた彼女が一人、昇降口前に立ちすくんでいたのが去年の9月。侑士と歩いていた時の事だっけ。練習が終わって早く帰ろーって侑士に呼びかけて帰ろうと昇降口に向かうと、ドア越しに雨を見つめてる女生徒がいた。侑士がなんか下らねー事言ってたけど何言ってたか覚えてねー。ただ、覚えているのは、傘を忘れた彼女が少し寂しそうに笑っているその姿。


「何やってんだ?苗字」
「傘忘れちゃって」


えへへ、と眉を下げて話す彼女をなんだか放っておけなくて。侑士にごめん、苗字送ってく。と告げるとなんだかやたらにやにやしていたっけ。気持ち悪かったから蹴り入れといたけど。なんか慌ててた苗字を半ば強引に傘に入れたんだよな。ちょっと悪い事したなーって思ったけど、まあ今まで話せなかったクラスメートと仲良くなれたんだし、結果オーライって事で。とか無理やり自分を納得させて、彼女を送った。その次の日だっけ?その日もまた雨が降ってて、傘を忘れた俺が昇降口前で亮を待ってた時だったよな。後ろから肩を叩かれて、ちょっと不機嫌だった俺はおせーよ亮!って振り向いたら、そこにいたのは亮じゃ無くて苗字で。まずい事したって、慌てて謝った俺に無言で傘を押しつけて走って行っちゃった時はまじで嫌われたかと思った。まぁ結局恥ずかしくて傘を渡すことしかできなかったらしいけど。


「がくと、遅いよ!」
「わり、遅くなった。まった?」
「待った!だから帰りアイス奢ってね!」
「うわ、マジかよ!」


とか言ってた割に今ではこんなに喋るようになってるんだけどさ。あぁ、ちなみに今は雨が降らなくても二人で帰るような仲なんだけど、やたら侑士がにやにやしててムカつくんだよな。とりあえず腹辺りにパンチでも一発入れようかな。


雨の日の後日談


(雨が降っていなくても)
(必ず送ってあげるよ)


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お題、確かに恋だった様より


2011/10/10 最早何も言うまい。




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