あのね、
気怠い午後の掃除。やる気の起きない自分はズルいと分かっていながらも、中庭へとやってきて教室の掃除をサボっていた。ついでにこの後の授業もサボってしまおうかと考えつつベンチに腰掛ける。俺の重く怠い体と気分とは正反対に晴れ渡る青空が広がる空をベンチに寄り掛かりながら見上げ、溜め息を吐き出した。
「なんかあったワケ?」
俺の顔を覗き込んできた人物により光が遮断された。影になって顔が見えず、突然のことに驚き声をあげてしまうも、それが知っている人間だと分かり俺は眉間にシワを寄せる。
「なにすんねん、苗字」
不機嫌だと言わんばかりの声と表情で言ってやれば彼女はケタケタと笑い始める。ムカつく女、と悪態を付けば彼女はまた笑い始める。何がそんなにおもしろいのか理解できない。彼女は最初に会ったときからそうだった。夏休み前の転校生と言うなんとも微妙な時間にやってきた彼女はその変わった性格と達者な喋りでたちまち人気者になった。俺はそれが少し面白くない。じぶんでも子供じみた考えただと思うが、人気者の彼女に嫉妬していた。何となく喋りたくなくて彼女を避けていたので二人きりになるのは初めての事だった。
「ごめんごめん、怒らせるつもりじゃなかったんだよ」
「あっそ…」
「相変わらず私の事が嫌いなんだね」
とんでもない事をさらりと言ってのけた彼女は相変わらず笑顔を向けてきている。一体何故、そんな事を言い出すんだ。大体そう言うのは思っていても口にしないのが暗黙の了解、言わばルールのようなものではないか。相変わらず何考えてるか分からない奴だな。そう溜め息をつきそうになるも、此処でそんな事をしたらまたからかわれる。うまくかわす事は出来ないかもしれないがもうこれ以上話を広げたくない。
「…煩い。どっか行けや。邪魔やねん。」
「あっはっは。じゃあ退散するとしようかな。」
「…うざ」
思わず零れた言葉にストレートだねぇ、とまた笑う彼女。一体何がそんなにおかしいのかだれか説明してくれ。まったく面白くない、と言った様にベンチから立とうとするとねぇ一氏、と話をつづけられた。あぁ、もうめんどくさい。一体なんだっていうんだ。面倒だ、と言わんばかりの表情を彼女に向けるもやはり効果なし。それどころか楽しそうにしている気がする。
「私結構一氏のこと好きだよ」
「……は……」
「…なんちゃってー…」
赤く林檎のようになった彼女。その様子をただぼーっとみていた。俺のこと好きって、本当にそうなのか?そう疑いたくもなるが彼女の様子をみたあたり嘘とはとても思えなかった。念の為マジ?と小さい声で聞くと、小さく首を縦に振る。…マジか。
俺…どないすればええねん
(この空気に耐えられず)
(走り去る君を見つめながら)
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お題、はちみつトースト様
2011/10/10 一氏は自分の興味ないことには無気力だと思います。