始まりと同時に終わる恋



「私は数学なんて無くてもいいと思うの」
「馬鹿じゃねーの」


だってそうだと思うでしょ!この暑い夏、皆が楽しくプールやら海やら祭りやらと浮かれてる時に一人悲しく学校の先生と補習授業。しかも数学の為だけに。信じられない。一体私が何をしたと言うのだ。


「そりゃお前が中間で赤点取ったからだろうが。」
「だからってなんで私だけ…!」
「そりゃお前だけ赤点だったからだろうが。」


あーもう、本当最悪だ。大体あんなことが無ければ数学なんて余裕だったのに。本当付いていない。やる気も何も、起きないよ。重い溜め息を吐きだしてシャーペンを放り投げる。もうやる気も何も起きん。駄目だこりゃ。


「そんな事言ってねーでさっさとやりやがれ。」
「大体先生がこんなんだから出来ないんだよ…。」
「成績1で良いんだな。」
「すいませんでした私がめんどくさがってやらなかっただけです」


素直に謝り、机に転がるシャーペンを拾えばったく、と呆れたように息を吐く先生。でも本当に先生のせいでもある。そんな風に怒られたら出来るものも出来なくなってしまうと思わない?


「…しかたねーな、怒んねーからやってみろ」
「じゃあ怒ったらアイス奢りね?」
「なんで奢んなきゃなんねーんだ」


教科書を丸め棒のようにして私の頭をはたく先生。その指にはきらりと光る指輪。ああ、先生結婚するって噂本当だったんだ。


「ああ」
「意外、奥さん可愛い?」
「ああ」


なんとなく、そのままの話の流れで会話をしていたのに何故だか胸がもやもやした。なんで。


「生徒とどっちが好き?」
「どっちも」
「その答えはずるいよ」


そう言って唇を尖らすとまた頭をはたかれた。答えられないような事聞く方が悪い、だって。それってなんか矛盾してない?


「先生にもこたえられない事ってあるんだね」
「俺をなんだと思ってやがる」
「せんせい」


間違ってはねーか。なんてひとり呟きながらもふに落ちないって顔してる先生がなんだか可愛かった。


「羨ましいな」
「あ?」


思わず零れた言葉に顔を上げる先生。しまったと口を紡ぐも時すでに遅し。何が羨ましいんだ、と聞いて来た先生に私は笑ってごまかす。


「何でも無いよ」
「なんだよ、気持ち悪いじゃねーか」
「結婚が羨ましいって思っただけ」


そう言うと先生はふっと優しい笑みを浮かべて、やっぱり女は結婚にあこがれるんだなぁ、って。


ちがうよ、そうじゃなくて


(先生と結婚できる奥さんが)
(羨ましいって思ったんだよ)


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2011/09/13 …べ様で悲しめって難しいわ。




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