rainyday



久々に部活がオフになったのでサエと遊ぶことになった私は上機嫌だった。それはもうびっくりするくらいに上機嫌だった。今、冷静に思い返すと正直どん引きするくらいには。相手がサエだから仕方ないと言えば仕方がない。なんせ私は小学校から今までの10年間、ずっと彼に片思いしていたのだ。昔から仲がよかったせいか、特に誰かに疑われたことは無かった。勿論片思いしている事は誰にも話したことはない。が、恐らくバネ辺りにはバレていると思う。多分、サエにはバレていないと思うけど。告白しないのかと以前バネさんに聞かれた事があったけど、そんな事怖くてできるはず無い。誰かにとられるのも嫌だけど、この親しい友人と言うポジションを失ってしまうのは凄く怖い。わがままだと自分でも分かってる。でも仕方がないと思うんだよ、私は。


「久々に遊べると思ったのにね」
「そうだなー」


眉を下げて残念そうに笑うサエは全身ずぶ濡れだ。各言う私も、サエがタオルを貸してくれたのでそこまで濡れた訳では無かったが、ほっておいたら風邪を引く位濡れてしまっている。放課後遊んで居た時、いきなり雨が降り出してきてしまったためサエの家で雨宿りさせて貰う事にした。…のはいいが、正直もうこの時点で耐えられないくらい心臓が痛い。追い打ちをかけるようなサエの格好ももう耐えられない。水も滴るなんとかって言いますけどこれは私には刺激が強すぎると思う。


「はい、タオル」
「ありがと、う」
「どうかした?」
「…え、なんで?」
「顔赤いよ、風邪ひいちゃった?」


心配そうに顔を覗き込んでするサエに思わず後ずさりをしてしまう。ただでさえこんな状況で信じられないほど心臓が速く動いているのになんでそんな近付いてくるの!と叫んでしまいたかったが、そんな事出来るはずもなく。笑ってごまかそうとするもサエは私が空けた間をいとも簡単に埋めてしまった。


「なに?なんか隠してるの?」
「なんも隠してなんかないよ?」


俯き加減で言っても説得力のかけらも無いように思えるが、サエにはそれで十分だったようであっさりそっか、と呟いてベットに腰かけた。が、何やらご機嫌斜めになってしまったようで濡れた服のまま拭こうとしない。風邪ひくよ、と促してみるも聞いてるのか聞いてないのか分からない曖昧な返事ばかり。


「もう、聞いてんのー?」
「聞いてるよ」
「じゃあ拭こうよ」
「名無しが拭いてー」


妙に甘えた声で小さい子のような事を言い出したサエに一瞬どころか三秒位石化していたと思う。聞き間違いかとスルーしそうになったが、早くーと急かすサエの声に現実なんだと我に返り、誤魔化すように仕方ないなぁ、とタオルを彼の頭に乗せて拭いてあげる。


「ちっちゃい子、みたいだよ、サエ」
「なんで?」
「なんでって、だってこんな風に甘えたりしないよ、普通」
「そうかなぁ」
「そうだよ」


だって友達だから。自分で言ってて虚しくなる言葉だな。ちょっと自虐的な笑みがまじっていたかもしれない。こんなんじゃ友達が、自分の守ってきたポジションができなくなってしまう。こんなんじゃ駄目だ、とサエの髪を拭いていると不意に手首を掴まれてサエの瞳が合う。


「友達だから、こういうことしちゃ駄目なの?」
「…そう、だと思うよ?」
「…じゃあ、」


もう友達止めようか


(それまで張っていた意地さえ)
(君の一言で壊れてしまった。)


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2011/09/09 雨の日ってテンション下がります。




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