不幸になれば
不幸になれば幸せがやってくるの。
いつか彼女が言っていた言葉を思い出した。
彼女があの白い四角い小部屋で、そう笑っていた事を思い出した。
その時俺はそうだね、と同意した。彼女が病気で、今は辛くてもきっとこの後幸せになれる。そういう意味だと思っていたから。俺自身の体験からも、そういう意味なんだって疑いもしなかった。
何にも分かって無かったんだ。俺は。彼女を勝手に強い人間だと、負けるはず無いと、こんな事で精神が脆くなってしまうほどの弱い人だと、考えもしなかった。
でも俺には分からない。不幸になれば幸せがやってくるなんて、そんなことは考えられない。君がいなくなって、考えて考えて、もうずいぶん経つけれど、答えなんかわからない。ただ、あの日の事を未だに思い出して泣いて悔むだけ。
君の言うとおり、不幸になれば幸せになれるのなら、俺はもう世界の誰よりも幸せになっていても可笑しくないと思うんだ。なのに、なんで不幸のままなんだ。
君がいなくなって、もうずいぶん経って、涙も枯れたら、そしたら幸せになれる?君がいないのに、幸せになれる?
昨日の事みたいに、鮮明に思い出す事が出来る君と過ごした時間が、色鮮やかに脳裏に浮かぶ君の笑顔が、意味の無いもののように、過去の出来事の一部として扱える日が来るのだろうか。
君の言っていたしあわせってどんな色?君が想い描いていた幸せって何だ?どうして、その幸せの中に俺を連れて行ってくれなかったんだ。何故、何故何故何故。
君の想い描く幸せの中に俺がいない。
その現実を受け止められないまま時間だけが過ぎて行く。
幸せに。なんてなるはず無い。
(君のいない此処に何の価値がある)
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2011/09/09 …病んでるチックな幸村君。