キャリーオーバー



私の一つ上の彼氏、精市君は私の事を全く彼女として見てくれません。だから彼女として見てもらう為に恥ずかしいと自負していますが、頑張りたいと思います。


「精市君。」
「なに?て言うか、そこのせんべい取って」
「はい、でさ、今日泊まっていい?」


せんべいを渡しながら彼にそう言えば、精市君は奇妙な物でも見たかの様に眉間にシワを寄せていました。酷い。


「駄目、かな?」
「……別にいーけど?」
「本当?」
「いいよ、今日俺しかいないし」


なんて事でしょう。今日精市君家は彼しかいないそうです。今更ながら怖くなって来ましたがここが頑張りどころ。頑張れ私。


「せせせ精市君、」
「せせせ精市君って誰」
「ちがくって、精市君」
「何」
「お風呂とか、洋服借りてもいいかな?」
「…いいんじゃない」


あれ。可笑しいなー…。ここはドキドキして目を逸らすとか照れるとか何かしらのアクションがあっても何ら不思議じゃないのにどうして彼は照れもせず、せんべいを食べ続けているんでしょうか。


「…じゃあ、お風呂借りるね?」


何度も来ている家なので大体の物の場所は分かるので特に精市君に場所の確認を取ることなく席を立ち。脱衣場までやって来ると、精市君が洋服を持ってこれ着て、とジャージを持ってきてくれました。しかしながらいつもと本当に変わらない態度で悲しくなってきました。

精市君って性欲無いの?

そんなアホなことを考えながら風呂から上がり部屋に戻ると、精市君がベットに座っていらっしゃいました。どうしよう。何か本当に今更だけどドキドキしてきた。隣に腰掛けて精市君を見つめる。


「精、市君」
「何?」
「好きだよ、精市君」
「……」
「だからね?その、」


しよっ…か?と言った途端、ぐらりと世界が揺れたかのごとく視界が揺れ、彼と一緒にベットにダイブすれば白い天井と至近距離にある精市君の顔が視界に入った為、押し倒されたんだ、と理解するまでそう時間はかかりませんでした。とは言え、いきなりの事で理解するまでやはり時間はかかりましたけど。


「精市君、あの」
「ふーん?いいの?」
「え?あ、うん」
「そっちから誘ったんだから待ったナシだよ?」


何時もよりずっと低い声で囁かれて腰が砕けるかと思いました。精市君、そんな男の子みたいな声で喋ること出来たんだね。不適な笑みと楽しそうな声に心臓が可笑しくなるんじゃないかって位ドキドキしてるんですがどうしましょう。いつものとは違うキスにも追い付けなくて、頭は回らず酸素を取り込むだけで精一杯。
精市君はまだまだ余裕そうです。部活で鍛えた体力の差なのでしょうか。私も運動部にすればよかった。


「精市君、好き、大好き」
「あんまり可愛い事言わないでくれる?」


本当に止まんなくなるでしょ。
おでこにひとつ、キスを落としながらそう言った精市君はちょっとだけ余裕の無い表情をしていた。久々にみた。精市君の余裕の無い表情。いつぶりだろう、三年ぶり位かな?きっと私が嫌って言うと思って今まで我慢してくれてたんだろうな。精市君、本当に優しいなぁ。


「考え事なんて、してる余裕、あるの?」
「な、いです、」


漏れる声が恥ずかしくてぎゅっと口を閉じれば、我慢しなくていいよ、と精市君の声と共に唇が重なる。


「ねぇ、名無し」
「ふっ…う、ぇ?何?」
「まだ、余裕そうだね」


ムカつく、ともっと激しくなる攻撃にもう付いて行けないです。余裕そうなのは精市君じゃないの?なんて考えてはいるものの、言葉には出来ず、悔しかったので精市君の馬鹿、と心の中で呟いて置きました。


もうとっくに限界です


(好きだよ名無し)
((…精市君が好きって言った…!))


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2011/07/20 こんなゆっきーが好き。しかし温いな…。




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