ハニー・トラップ



LHR中だと言うのにきゃあきゃあと騒がしい廊下をぼんやりと眺めながら、ふと思った。今日は何日だっけ。6月、4日。それだけではピンとこないかもしてないけど、次々と綺麗に包装された箱を女の子が隣の席の蓮二君にお誕生日おめでとうなどと言って渡していくのを見れば誰だって気付くはずだ。今日がこの人の誕生日だってこと。だからか、昨日から女の子が何やらそわそわとしていたのは。なるほど、と自己解決しているとばっちりと蓮二君と目があってしまった。ずっと見てたのばれたな、これ。


「今日は蓮二君の誕生日なんだってね」
「…ああ、そうだが?」
「プレゼント沢山貰えて良いなー」
「…そうだろうか?」
「うん。…蓮二君、あのさぁ、そのプレゼントでダブってるやつとか欲しいなー…とか思ってたりするんですけど、くれないですか?」


なんとなく誕生日の話題へと持ってきてしまったけどこれはおめでとうって言った方が良かったかな。でも本当プレゼント一杯貰っていいなー。なんか一つくらいくれないかな。そんだけあるならきっと何かひとつくらいかぶってるはず。なんて誕生日の人に言うセリフじゃないと理解しつつも、思わず口を滑って出てきてしまった言葉に蓮二君はやわらかく笑ってくれた。


「なんなら全てやろうか?」


思いもしなかった言葉に言葉を失った。いくらなんでも全部なんて悪い。だって今日は蓮二君の誕生日なのに。それではまるで私が蓮二君のプレゼントを奪い取ったようで何とも言えない気分になってしまう。いや、実際似たようなものかもしれないのだけれど。


「その代わりと言ってはなんだが」
「うん」
「……………」
「?」
「いや、やはりなんでもない」
「え、」


何、気になるんだけど。続き言ってよ、なんて急かしてみるも彼は何も言わず、だんまり状態になっている。そして考えるような素振りをし、ぱっと私の方へ振り返ってきた。


「では放課後、待っていてくれないか。」
「放課後?」
「あぁ。部活のミーティングがあるんだが、その後会えないだろうか。」
「わかった、いいよ」
「そうか、では待っていてくれ。」


そう言って靴を翻して教室から出て行った彼は心なしかいつもより楽しそうだった。気のせいかもしれないけど。気のせいじゃなかったら、あぁ、まさかね。そんな訳無いよね。

次々に頭に浮かぶ淡い期待を振り払うかのように自分に言い聞かせ、丁度今日の日誌当番が自分だった為、日誌を黙々と書いていく。あぁ、それから今日の英語の小テスト、間違いだらけだったから直して提出しないと点数稼げないや。色々とやる事を思い出し、一人教室に残っていると先生に褒められお菓子を貰ってしまった。なんだか今日はついてるなぁ。

暫くして蓮二君が息を切らせて教室へと入ってきた。きっと急いで来てくれたのだろう。普段息を切らしているところなんて見たこと無いから。


「すまない、思いの他長くなってしまった。」
「全然平気だよ、気にしないで。」
「そうか、それなら良かった。」


安心したように胸を下ろす彼を見て益々期待は膨らんでいく。あぁもう、ちょっと待って。落ち着け心臓よ。胸に手を当て気持ちを落ち着かせようとするも中々上手くいかなくて気持ちはどんどんと膨らんでいく。そんな中、顔を覗き込んでくる彼に更に心音は早くなる。


「どうした?」
「う、ううん」
「顔が赤い」


そう言ってどんどんと近くなってくる彼に私の心臓はもう耐えられそうに無い。なのに優しく私の頬に触れてるから、もうおかしくなってしまいそう。


「大丈夫か?」
「だ、大丈…夫」


そうか、とフッと笑う彼にもう完全に心臓を捕まれてしまいました。


ハニー・トラップ


(あなたに捕まってしまったようです)


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2011/06/04 蓮二生誕様に提出させて頂きました。
凄い意味わかんなくなった(笑)
けど楽しかったです!ありがとうございました!!




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