好きって言って。



「景吾、好きな人いる?」
「……お前は俺の何だ?」
「…彼女?」
「何で疑問系なんだよ。…分かってんならさっさと手元の書類に目を通して判子押して俺様に渡しやがれ」


今日初めて分かったことじゃないけど、ね?なんか景吾って周りの子にはナルシストとか四六時中愛の言葉を囁いてくれそう、とか思われてるみたいで。実際は全然そんな事無いのに勝手に勘違いしていいなー、って言ってくる女の子に会った後、何にも言ってくれない景吾に何でか腹がたったりするのよ。そうゆう時にこの質問をすると、そのたびに彼は受け流して私の欲しい言葉を言ってはくれない。別に四六時中言って欲しいとか、そんなのじゃないけど、一応私も女の子なんだからそう言う言葉、言って欲しいのに。


「最近その変な質問が多い気がするんだが、気のせいか?」
「…気のせいじゃない?」
「何怒ってんだよ」
「怒って無いわ、別に。」
「怒ってんじゃねーか。なんだよ、俺様になんか言いたい事でもあんのか?」


あるわよ。
なんて言えるはずもなく、黙ってそのまま作業をしていると呆れた様な溜め息をついて景吾が会長席から立ち上がる。溜め息なんてついて、何よ。溜め息付きたいのはこっちだわ。そういう気持ちも込めて景吾を見上げると、思いの他近くに居て少し怯んでしまった。そんな私の様子には気付かなかったのか、はたまた知らない振りをしたのか、彼は私の横に腰を下ろしてじっと私を見つめてくる。睨む様に景吾を見てしまったので私から目を逸らしたらなんだか負けたような気がする。とは言え、このまま景吾と見つめ合うのは照れ臭いし気まずい。などと心の中で葛藤を繰り広げるも、何もしないまま見つめ返していると、不意に景吾の顔が近付いてくるではないか。吃驚してソファーから逃げようとするも時既に遅し、と言うやつだろうか。私は彼に押し倒されてしまっていた。


「な、何するのよ、景吾!」
「うるせえ、少し黙ってろ」
「ちょっと待ってよ、ここ学校よ?こんな事する場所じゃないわ!」
「黙れって」
「景吾さっきと言ってる事矛盾してる!言いたい事言えって言った癖に、今度は黙れなんて無茶苦、ん」


黙れという景吾の言葉を無視したのが癇に障ったのか、私の口を手で抑え込む彼。また、私の嫌いな呆れた様な溜め息を吐いて話を聞け、なんて言う。何よ、大人ぶって。景吾っていつもそうよね。何でも分かってるって顔して、本当の所何も分かって無いじゃない。私が今欲しい言葉は、黙れなんて言葉じゃないのに。私が今して欲しい事は口を押さえて貰う事じゃないのに。景吾なんて何にも分かって無い、馬鹿馬鹿馬鹿。


「…お前の事だからまた馬鹿とか思ってんだろうけどな、」
「………」
「俺様が馬鹿な訳ねぇだろが。」
「………」
「…お前の事なら誰よりも分かってるつもりだ。」


うそつき。じゃあこの口を塞いでる手を離してよ。私の欲しい言葉、言ってよ。私がして欲しい事、早くしてよ、景吾。羨ましいって言われた時、切なくなんてならないように。もしかして景吾に嫌われてるんじゃないかとか、そんな事思わせないで。景吾なら私の不安を消す事位、簡単に出来るでしょう?


「好きだ」


しっかりと聞こえた、私の欲しかった言葉と共に口を押さえていた手が頬へと移動し景吾の顔が近付いてくる。予想出来ることなんて私にはたった一つしかない。ぎゅっと硬く目を閉じ高鳴る胸を必死に押さえつけていると、ばーか、と言う言葉と共に頬をつねられた。


「景吾、痛いわ」
「…お前はどうなんだよ」
「え、どうって…?」
「だから、」


お前も好きって、言え。


(…好きって言えなんて横暴だわ。)
(その割には随分とにやけてんじゃねーの。)


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2011/05/15 口調なぞ。




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