頑張らない君が



明日は私の彼氏の誕生日。いつもは普通に誕生日おめでとうってケーキ作ってお祝いして、ってやってたんだけど。毎回これじゃあ、きっとブン太も飽きてしまうだろう。そう思い、今年は去年とは一味違ったものを考えた。一ヶ月くらい前からどんなものがいいかとか、色々作戦を練って赤也やジャッカルに協力して貰ったりして。喜んでもらえるか少し不安なんだけど、みんなは大丈夫って言ってくれたし多分大丈夫、のはず。なんだけど…、最近練習がキツイのか疲れているような気がして少し不安だったりする。もしきついようだったら時間変えてもあんまり支障は出ないから遅い時間に変更しようかと考えているときに丁度ブン太から電話がかかってきた。誕生日の一番最初に声が聞きたいなんて言う彼に私はもう骨抜きだ。ってそうじゃなくて。ブン太に聞かなきゃいけないんだってば。


「ブン太、明日13時に噴水待ち合わせでホント大丈夫?」
「おー、平気。なんで?」
「いや、ブン太疲れてるみたいだったから。なんならもっと遅い時間にしようか?って。」
「大丈夫。それに明日は一緒に出かけるって前から決めてただろぃ?」


そういって笑うブン太に少し肩の力が抜けたが本当はきっと疲れているはずだ。ブン太の誕生日なのに無理させちゃ意味がないような気がしないでもないけど。でもどうしても連れて行きたいところがあるんだ。口には出さずごめんね、と呟きながら分かったと言えば彼は嬉しそうに相槌を打ってくれた。そうこうしてるうちに日付は変わってしまいそうになっていた。4月20日になった瞬間、おめでとうブン太、と言えばありがとう、なんて普段じゃ想像できないような優しい声が帰ってきたから明日の事もきっと喜んでくれるだろうと安心してきた。私のへたくそなケーキだって美味しいって言って食べてくれる彼だ。きっと喜んでくれるはず。そう言い聞かせ電話を切り、明日に備えて早めに寝る事にした。
翌日、待ち合わせの場所に5分前に辿りつく計算で起きて、プレゼントを持って噴水の前に立っているといつもは寝坊したやらご飯食ってたら遅刻したなどの理由で遅れてくるブン太が珍しく待ち合わせ時間の2分前にやってきた。


「よ、名無し。待った?」
「待って無いよ。だってブン太珍しく時間通りだもん」


珍しくは余計だっつの。なんて笑いながら言って私の頭を軽く小突く彼に笑い返した後、彼の腕をとり目的の場所まで歩いて行く。途中何回かどこに行くか聞かれたが内緒と言って教えはしなかった。だって教えてしまったらつまらないだろうし、それに目的地に着いたら一発で分かってしまうだろう。
案の定目的地に着いた途端ブン太はあ、と声を漏らしていた。


「プラネタリウム…?」
「そう。…入ろう?」
「おぉ、」


なんかすっげー久々。と子供のころを思い出しているのか、本当に童心に帰ると言った風に目を輝かせているブン太を見て心底ほっとした。チケットを買い中に入ると人は思ったより少なく心地の良い静けさが広がっていた。
しばらく席に着いたまま雑談をしていると、辺りが暗くなっていき星が広がっていった。元々はブン太の疲れを癒す事が出来るような所に行きたいと思っていたので私自身が楽しむと言う目的ではなかった。けど、いつの間にか私も館内に広がる星に夢中になってしまっていた。見入ってしまっていたのか1時間の上映だったにもかかわらず凄く短くあっという間に過ぎてしまったように感じられた。ブン太も同じだったのか、もっと見てられたよなー。なんて笑っていた。


「プラネタリウムなんて名無しにしては洒落たとこ選んだよな。」
「ちょ、なんかさりげなく酷くない?」
「ははっ、じょーだん!サンキュな、めっちゃ癒された。」
「別にそう言う訳で選んだんじゃないよ?」
「はいはい」


バレバレと分かっていてもなんだか恥ずかしくて言い訳するも笑って流されてしまった。もう、いつもは子供っぽい癖にこういう時だけ大人っぽくなるのはずるい気がする。あぁもう恥ずかしい。多分今顔赤いんだろうな、私。


「ありがとな、名無し」
「…うん」
「後はケーキがあればもうなんもいらねぇ!」
「分かってるよ、お家帰ったらちゃんとあるから」
「まじかよ!」
「マジマジ。それから、これ」


はい、と縦長の箱を手渡せば誕生日プレゼント?と驚いたように目を丸くしている彼。開けていい?と聞かれ頷けば丁寧に箱を開いていくブン太。中身を見て驚いていたのはきっとそれが彼の欲しがっていた腕時計だったからだろう。


「こ、これ、なんで…え、めっちゃ高ーだろぃ!?」
「がんばっちゃいましたー」
「っ」


えへへ、と笑った瞬間、グイッと手を引かれすっぽりと彼の腕の中に入ってしまった。それと同時にぎゅーっと抱きしめられて、道行く人々にちらちらと見られている。恥ずかしいったらありゃしない。ブン太、もうすぐで家だから放してよ、と言ってもブン太の腕の力が弱まる事は無かった。苦しいよ、ブン太。と言えば首筋に埋まっていたブン太の顔が少しだけ浮かんだ。


「ありがとう、名無し」
「ううん、別にいいよ?」
「すっげー嬉しいけど、俺はお前に無理して欲しく無い」
「平気だよ、全然」
「俺が嫌なの。それに、俺の為に考えてくれたプラネタリウムだけでほんと嬉しかったから。」
「…うん」
「でも時計ありがとうな」
「…どっちよ」


無理しなくていいという言葉に本当に嬉しくなった。実は皆にも同じような事を言われていたんだけど、どうしてもブン太を吃驚させたくて少し無理をしてしまった。でもブン太はそんな事さえ簡単に見抜いてしまっていて。本当彼には勝てないな、と思った。


ずっと好きだから。


(これからも一緒にいようね)
(あたりまえだろぃ)


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2011/04/28 ごめんブン太、遅れすぎた挙句良く分かんなくなった(泣)






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