3月17日



「お誕生日おめでとー」


言葉と共にクラッカーの紐を引く。部室に来た謙也を驚かせようとレギュラーメンバーで前々から準備しただけあって、作戦は完璧。今日までバレずに準備することが出来た。(途中金ちゃんがばらしちゃいそうで大変だったけども。)現に今私の目の前には吃驚した顔の謙也が立っている。え、何々?どういう事?なんて聞いてる謙也に財前くんがサプライズっすわ。といつものクールな顔で言っていた。おめでとう、と言われながらプレゼントを受け取る謙也は涙目で、なんだかちょっと可愛い。


「うわー、なんかめちゃめちゃ嬉しいんやけど!」

「よかったねー、謙也」

「おん!…って、名無しは俺に無いの?」


ふっふっふ。その言葉を待っていたわ!謙也君!なんてどこぞの魔女みたいな声のトーンで言えばえ?え?なに?なに?と謙也は慌てだす。可愛いなぁホント。って、そうじゃないか。私は机の上に置いておいた箱を取り出して中身を出す。と同時に金ちゃんが声を上げる。へへん。美味しそうだろう。なんたって今回は一番上手く言ったからね。


「うまそー!!なぁなぁ、食べてええ?」

「だーめーやー、金ちゃん。今日は謙也の誕生日なんやで?」

「うー…白石のけちんぼー」

「ケチとかそう言う問題とちゃうで?金ちゃん」

「まあまあ。ちゃんとみんなの分あるから心配しなさんなって」


言い合いしている白石と金ちゃんの肩をポンと叩いてなだめてから謙也の方へと向き直る。HappyBirthday謙也とチョコペンで書かれた私お手製のケーキを持っておめでとう、と言おうと口を開いたのに、その言葉は謙也の後ろに立ってフリップを掲げる財前によって邪魔された。なんだって?とフリップを見ている間に私の後ろに隠れていた一氏が私の声真似で


「このケーキと一緒に私も食べて?」


なんて言うから、謙也の顔は赤色に染まっていく。ついでに耳も。て言うか、何してんの、一氏と財前。作戦大成功ー!なんて他のメンツがにやにやしながらハイタッチしている。ちょっと待って、何これ、どういう事?だ、誰か説明して…!


「つまり、今日の部活はオフやから、思う存分二人でいちゃついちゃってってことなんよ」


…なんじゃそりゃー。私の耳に口を寄せこっそりと言った様に小春ちゃんは話してくれたんだけど、その内容に今度は私の顔と耳が赤くなる番だった。ちょっとみんな、何してくれてんのさ。なにこれ、どんな辱め?て言うか、謙也、さっきの台詞、もしかして私が言ったと思ってんのかな?まずは誤解を解いといた方が良いよね。あぁ、でも謙也と話すのすっごく恥ずかしいんだけど。もうやだ、なにこれ。ほんと何これ。


「け、謙也、さっきの一氏の声真似だから!」

「そそそそんなんとっくに知ってるっちゅー話や!」

「謙也さんどもりすぎっすわ」

「まぁま。ここは二人っきりにしちゃるっちゅーんが大人ばい」

「それ、大人なん?」


ぞろぞろと部室から出て行くみんなを止める事なんかできるはずもなく、私と謙也は二人っきりになってしまった。気まずい。気まず過ぎる。ちょ、誰か助けてください。て言うかなんか謙也近付いて来てね?ちょ、ちょ!待って、wait!なんて私が謙也の前に手を突き出したからかな。名無し、って切なそうに呼ばれちゃって。どうしよう、なんか、目の前にいる謙也が急に大人に見えちゃってどうしよう。目のやり場に困るんだけど、謙也さん。て言うか、その、もしやとは思いませんがほんとに此処で私を頂いちゃうなんて事は無いよね?まさかね、うん。謙也だもんね。無い無い無い。軽く脳内パニックな私をしり目に彼の細くてがっちりした手は私の方へゆっくりと伸びてくる、って嘘、ほんとに?ほんとに頂いちゃう系?え、ちょ、待って謙…


「なぁ、ケーキ、食べてもええ?」


…ですよねー。そうだよね、そうだよ。なーに一人で盛り上がっちゃってんだかね。あ、うん。なんて我ながら間抜けな声だったと思う。若干放心状態の私を見て何を思ったか、謙也は微かに口元に笑みを浮かべながらわざと私の耳に息を吹きかけ此処ですると思った?なんて言うから、私はもう黙るしかなかった。


こんな予定じゃなかったんだけど、な。


(この予想外は、いい予想外?)
(それとも悪いもの?)


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2011/03/17 こんなんいたら惚れるっちゅー話や!







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