Hello

※現パロ




夕暮れに照らされた教室で、俺は重い口を開いた。 
最近妙な手紙が届くようになった。変な視線も感じるしこわいんだ、柄にもないけど。そう言った俺に、ミカサとアルミンが目を開くのを雰囲気で感じた。

「…それ、本当?」

「冗談でも言いたくねえ」

「そう」

そっけなく言い放ったミカサは誰より心配してるようだった。アルミンもアルミンなりに心配しているようだ。目でそう訴えている。本当は幼馴染を巻き込むつもりはなかった。ただ、手紙を(不本意ながら)読むにつれてどうやら俺たちが幼馴染であることや、どの高校に通っているかすでに把握済みらしい。それだけなら俺が我慢すればいいだけだが、もし二人に何かあったらと思うといてもたってもいられなくてこうなったわけだ。

「それなら、私が」

「いや、いいよ。ミカサの方が危ないだろ。お前になにかあったら親に怒られるしな」

「違うエレン、そういうことではない。あなたが危ない」

「大丈夫だって。そもそも俺みたいなのストーカーするやつの気がしれねえしな。自分の身くらい自分で守れるよ」

こう見えても腕っ節には自慢があるんだ。ミカサだって知ってるだろ? そう言った俺に、ミカサはようやっと安堵したようだった。

「な、なら僕が守るよ!」

「それこそアルミンのがあぶねえだろ!」

「け、喧嘩はそうだけど、一緒に帰るとか…。一人にならないことが大事でしょ?」

「あー…まあそうか。じゃあ頼むな」

「うん!」

いつも守っているアルミンにそう言われるのはどことなくむず痒かったが、アルミンなりに心配しているんだなと思うと決して不快ではなかった。

先生にそろそろ帰れよ、と諭され今日の話の通りアルミンと一緒に帰ることになった。ミカサは相変わらず塾らしい。忙しいんだなあいつ、と思いながら遠ざかる彼女の背中を見つめた。

アルミンに急かされ歩く。こうやって幼馴染と一緒に帰るのは久しぶりで、なんだか懐かしい気分になった。高校生になってからは、昔ほど一緒に帰ることは少なくなった。お互い部活があるし、ミカサなんかは部活に塾にと忙しない。アルミンも大学へ進む為に図書室で勉強ばかりしていたから。俺はといえば特に何があるわけでもなくただ、頼まれるだけ助っ人をやっているくらい。
そんなことを考えているとつい無口になってしまう。アルミンも懐かしさに浸っていたようで、心地よかった。
 俺の家と学校はそんなに離れていない。アルミンも少し歩けば程度だしミカサに至っては隣だ。
15分ほど歩いていると家につく。家から近い場所を選んだ甲斐はあったと思っている。

久しぶりでもう少し余韻に浸りたくてアルミンを部屋に誘ってみる。花もほころびそうな笑顔でうん! と言われればその、嬉しさもこみ上げるってものだ。

「お邪魔しま〜す…」

アルミンが家へくるのも久しぶりだよなぁ、なんて笑いながら階段をのぼる。俺の部屋は階段からとおくて、一番奥にある。近くにしてくれよと言ったが一蹴されるばかりだった。

「エレンの部屋久しぶりだな〜! いろいろ変わったよねえ」

「そりゃあな、お前らがよく来てたのってもう10年くらい前の話だし、そりゃ部屋もかわるよ」

飲み物とってくる、と一声かけて部屋を出る。冷蔵庫から麦茶をとって、お盆に乗せてまた階段をのぼる。久しぶりにこうやって話すな、なんて感じてしまう。高校生になるとこうも離れてしまうものか。

「持ってきたぞ〜…っと、あれ」

アルミン? と声をかけながらお盆を机に置く。それと同時に強い力で引っ張られ仰向けに転がされた。

「…ねえ、エレン」

窓からさす夕陽がアルミンと重なる。逆光のせいでいまいち表情がわからない。押し倒されている、という事実とそれが重なって、えも言われぬ恐怖となる。 

「ア、ルミン?」

「エレン、知ってる?」

「何を、」

いつものアルミンとは違う口調だった。鋭く突き刺さるような声。アルミンじゃないような。

「まさかミカサにまでいうと思わなかった。わざわざミカサのいない写真選んだのにさ、エレンはそんなにミカサが好き? 僕はね、ずっとずっとエレンが好きなんだ。愛してるんだ。エレン」

いつものアルミンじゃない。俺の知っているアルミンじゃない、と感じたときそれが恐怖感にかわった。冷や汗が背中を伝う。すこしだけ震える。アルミンはそれに気付いてないようだった。

「エレンもだよね。僕わかってるんだよ? けどあまりにもエレンが何も言わないから怖くなって手紙送ってみたんだけどどう? 書いてるとき、写真を同封するとき、すっごく気持ちよかった。ああ、エレンと僕はいま同じ気持ちなんだー、って。僕とエレンを阻むものは何もないのにね。エレンは何がそんなに怖いの? 子どもがほしい? ミカサとだったら産めるもんね。けどやだよ。子どもなんていらない。エレンさえいれば僕は満足だから。子どもなんて僕からエレンを奪うだけだもんね。わかってる。エレン、ねえどうして震えてるの? 嬉しすぎて? あぁ…、僕もだよ。嬉しすぎて、このまま射精しそうなくらい…」

エレンを愛してる。心の底から。二度と離さない。僕以外を、見ないで。エレンの綺麗な瞳は僕だけのものだもんね? そう笑顔で言いのけるアルミンが末恐ろしかった。こんな手紙、知らない他人からだと。無視すればいいだけだと思っていた。違う。こんなに身近にいたなんて。どうして今まで気付かなかったのだろうか。
思い出せばわかることだったのに。
アルミンの異常なまでのスキンシップ。体育の着替えのとき、必ず触られた。視線を感じて振り返るとアルミンだったなんてことは数えるのが虚しくなるくらい。
全て無関係だとおもっていた。たまたまだと。偶然なんだと。でなきゃどう説明すればよかったんだ。アルミンだなんてわかりっこないだろう。

この場で選べるのはひとつ。
アルミンへ、堕ちること。それが唯一許される道。それしかない。

ミカサ、ごめんな。けどお前を巻き込まなくて、よかったと思うよ。





 


 


もっと変態くささを出したかったんですよ。エレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンエレンなアルミンと、死ねよ!!って罵倒するくらい気持ち悪がるエレンを書きたかったような気がするんだ…。








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