I don’t feel anything


和泉×玄野で軽い性的描写がありますので18歳未満の方の閲覧はご容赦ください





熱い。暑い。やけに蒸し暑いこの季節、ざあざあと雨は降っていて部屋は湿気ている。曇り空のせいでやけに陰鬱になる気分は不愉快だったけれど、いまはどうでもよかった。よそ事を考えている俺を面白くないとでも感じたのであろう和泉が、いままで焦らすように動いていたのが激しさを増す。その動きに思考が持っていかれ、理性が飛んでいく。どろどろと脳みそが汗になって溶けていくような激しい行為は嫌いじゃなかった。何も考えなくてすむことほど楽なことはない。和泉もきっとそうなのだろうと思う。でなければ、こいつが俺とこんな関係になることなどあり得ないのだ。言葉にならない言葉が俺の意思とは無関係に引きつるように喉から出る。いいところを遠慮なしに突かれると、どうしようもなく情けなくなって、だけどそれすらも気持ち良くなる。変態だな、と漠然と思った。俺もこいつも歪んでる。死にたくない。死ぬかもしれない。今日ミッションがあったら。あちらの世界のことを考えれば考えるほど疑心暗鬼になって、にこやかに歩くカップルも、馬鹿騒ぎする同級生も全てが煩わしくて鬱陶しくて、どうしようもなく嫌になって一人でふさぎこんで、世界を憎んで、そんななかで、俺たちは嫌でも惹かれあった。似たような魂に愛とも憎しみともつかぬ感情に支配されて、本能のままに求めあった。子孫を残そうとする体は性別の壁を超えて。それがいつのことだったかなんて覚えてなどいない。覚える必要がないから。ただ生きてることの確認のために求めあう。穿ち穿たれ、甘い言葉などいらないと、欲しいのは、その、熱だけなのだ。
やがて俺の限界がきて、あぁ、という声が出てしばらくしてから和泉の唸る声が聞こえそれとほぼ同時に中に出された感覚がして身震いを起こす。生きている。俺たちはまだ、生きている。それだけのために、俺たちは時間を無駄にしている。ずるりと和泉のものが抜けていく感覚に少しの快感を感じたけれど、そんなことより今中に放たれたものを出さなきゃならないと思い風呂場へ向かう。後処理するのも億劫なほど疲れている。けれど恋人でもないこいつがするわけもないし、俺もこんなやつにされたくはない。セックスまでしといて何を、と嘲るけれど、俺と和泉の間にそんな甘い空気などない。必要とも思わない。今が確認できるならそれで充分だから。心が軋む。…さみしいのは嫌だと、心が叫んでいるのを、俺は無視した。




それから数日してから和泉がぱたりと学校に来なくなった。アキラが言っていたことを思い出す。あの日、吸血鬼どもに襲われた日だ。あの日から和泉はいない。俺は何となしに和泉が死んだのだと理解した。その事実に悲しいともなんとも思えなくて、俺は自分が人間じゃなくなった気分に陥った。けれどそれは当たっている。あまりにも人の死を間近で見過ぎた。和泉がいなくなると俺の相手もいない。生きている実感を得られない。今までどうしていたっけ。思い出せない。思い出そうとすると、和泉の俺よりもでかい無骨な手が身体をなぞる感覚やあの熱が浮かんで考えるのをやめるからだ。和泉の汗の匂い、髪の毛の柔らかさ、あの腕がどれだけ優しく俺を抱きしめたか。全てが浮かんで、やけに感傷的になっていく。それにすごくむかついて、くそ、とつぶやいた。なんで先に死んだんだ。なんで俺を。俺を、おいて行ったんだ。俺とお前は、あの世界で唯一理解できる相手だったのに。学校からの帰路、そんなことばかり考えて、視界が歪みぐずっと鼻が鳴ったのを自覚してから、苛立ちの理由に気付いた。できれば気付きたくなかったもの。必要ないと捨てていたもの。単純なことだった。俺はもう、あいつに抱かれることはない。あの腕の中で、考えることを放棄することがもうできない。嫌だ。一人は、嫌だ。和泉だってそうだったんだろ?俺にはわかる。俺と和泉は同じだから。だからできることなら、お前も俺と同じ気持ちだったならいいのに。

俺はお前を、少しだけど愛していたんだ。

その気持ちを認めてしまえばあとはくずおれるしかない。嗚咽が止まらなくて、ちくしょうと叫ぶ。こんな気持ち、気づきたくなかった。だってもう二度と手に入らないのだから。



I don’t feel anything
それでも何も感じ得られない。欠落した感情をおしえて




 
 
 


 


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