The day when we lost our minds.


かとくろ
 


雨が降っている。雑音を伴ってアスファルトへ落ちていく。窓の外から聞こえるその音がいつもより綺麗な気がして耳をすました。たまには叙情的になってもいいだろう。いつ朽ちるともしれない身で能天気なことばかり考えられるほど子どもではない。時々こうやっていやにしんみりしてしまう。そういえばそろそろアイツがくる頃かな。ついこの間、俺がコンビニ弁当ばかり食べていると聞いて心配していた。それなら俺がご飯作るよと言ってきたことは記憶に新しい。あいつは弟がいるからなのだろうが料理がうまい。羨ましいな、と思った。
けれどどうだろうか。これほど雨が強く降っていたら来ないかもしれない。そうなったら、この豪雨のなか外に出る気もさらさらないので晩飯は抜きになってしまう。まあいいか、それくらいで死にはしない。明日の朝たらふく食えばいいことだ、と思った。テレビのついてない部屋。雨の音だけが響く。その一定のリズムが睡眠を促す。眠い、寝ようか、と思ったところでドアを叩く音がした。急いで立ち上がって玄関へ駆けつける。慌てて鍵を開けようとしたせいでなかなか開かなかった。やっとの思いで鍵を回してドアを開ける。そこには予想通りの人物がいた。
 
「加藤…」
 「ごめんね計ちゃん、遅くなっちゃった」
 
もう一度ごめんねを繰り返して玄関へと入ってくる。一応傘は持っていたらしく、両肩の外側が少し濡れていたくらいだった。今から作るね、と言って知った顔で台所へ進んで行く。その背中を見て、加藤がまな板をだし始めたのを確認してからまたテレビの前へと座った。二人でいるときの沈黙は気まずい。大した話題もないので適当にバラエティ番組をうつした。 
十分くらいしてから加藤がいそいそと料理を運んでくる。遅く来てしまうからと言っていつもあまり手の込んだものは作りたがらなかった。どうも俺の食事する時間が遅くなってしまうからだとか言っていたが、俺は別に待つのになと思っていた。それでも簡素なものでもおいしいものはおいしい。素直にそう伝えると照れたようにはにかんだ。その顔がいつもの凛々しい顔じゃなく年相応の顔で、思わずくすりと笑ってしまう。それを聞いたらしい加藤が照れて拗ねたふりをしながら料理を口に運んでいく。それを見て俺ももくもくとご飯を食べた。

食後眠くなるというのは事実で、実際ごちそうさまをしてから加藤が食器を洗いに行ってそこまでの時間がたっていないのに俺はすでにうつらうつらしていた。 寝ぼけ眼で加藤の背中を確認する。広くて、がっしりしてて、男らしい背中。その背中に守られた人はどれだけいただろうか。その心で、どれだけ他人の心を安らげたのだろう。その背中に守られるわけではない、むしろ加藤を守るような立場にいる俺がどうしようもなくちっちゃく見えて虚しかった。別に守ってほしいわけではない。ただ、寂しかった。そんなことを考えていたら、食器を洗い終えたらしい加藤がこちらへと向かっていた。はっとして顔を背ける。それと同時に加藤が俺の横へと座った。
 
「なあ、計ちゃん」
「な、なに?」
 
いつもよりも重い口ぶりで発せられた言葉に動揺した。いつもと違う。何かあったのかと言おうと加藤へと顔を向けた。それと同時に加藤の顔が近づいてきて、唇へとなにかが触れる。
 
「…え」
 
驚きのあまり口がふさがらない。加藤は、俺に、なにをした?もしかして…キス?
 
「おまえ、」
 「ご、ごめん…つい」
 
ついって何だよと思いながら加藤を見つめる。耐えかねたらしい加藤がそんな俺を膝の上へと抱き上げて強く、抱きしめる。もしかして、もしかして。加藤って、もしかして。
 
「お前…俺のこと、好きなの?」 
 
その言葉に同意するかのような優しいキスをもう一度されて、俺も思わず抱き返した。どうして加藤は、久しぶりに会ったあのときからずっと俺のほしいものがわかるのだろう。そうだよ、俺はあの駅で会った時から、焦がれてたんだ。
 
 
The day when we lost our minds.
僕らが理性を失った日
 
あの日道徳という理性を捨てた。
 
 
 
 




 
 
かとくろは!!!もっともだもだしてる気がする!!!
もだもだした友達以上恋人未満な彼らが愛しくて仕方ない。 


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