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チャイムが鳴り終わり、一気にざわつく教室。テストが終わり、成績が返された。やばいだの、死ぬだの、やったーだの、エトセトラエトセトラ。
「………」
「…火神くん」
「………」
「火神くんまさか…」
オレは後ろの席に座る黒子に、返された成績表を渡す。黒子の目が見開かれるのとドアが勢いよく開くのはほぼ同時だった。
「バ火神ィ!!どうだった!!」
「返答次第によっては殺す!!」
どやどやと先輩たちが入ってきて、小金井先輩はなんかハリセン持ってる。
「や、それが…」
「火神くんセーフです」
「お…う、ええ!?あなたいつの間に!!」
あ、久しぶりの反応だなこれ。なんてことは置いといて。オレの成績はそう、伸びていた。まあギリギリなものもあるけど苦手な国語の成績の伸びにはオレも驚いた。担任からも、本来ならば書かないであろうに「よくがんばりました」とはなまるマーク。小学生か。
「マジか!!やったなバ火神!!」
「よくやったバ火神!!」
誉めてんの?けなしてんの?何とも言えずにいたが、はっとして黒子に向き直る。
「お前のおかげだ黒子。ありがとな」
「火神くんが頑張ったからです」
「あ…君が火神の勉強見てくれた子?」
「うわーもうマジで申し訳ない!コイツに教えるの根気いったでしょ?オレらからもありがとう!」
「いえ、そんなことは…」
先輩たちと話す黒子を眺めながら、ぼんやりとこの間のことを思い出した。へなちょこなシュートだったが、基本的な動作もフォームも完成していて、やけにボールに慣れていたこと。図書室での意味深な発言。結局あの後黒子はただ笑うだけで、ごまかれてしまった。
「あなたが…黒子さんね?」
そのときカントクが、日向先輩を押しのけて黒子の前に立つ。
「はい」
「…やっぱり」
「カントク?どした?」
カントクはちら、とオレの方を見る。
「黒子さん……帝光中バスケ部、キセキの世代のマネージャーをしていた黒子テツナさん」
「……!?」
みんなの顔つきが変わる。分かってないのはオレだけか。キセキの世代?帝光中?
「……そうです」
黒子が目を伏せる。マジかよ、という誰かの声。カントクは続けた。
「キセキの世代…5人の天才の傍でマネージャーとしても、公式戦には出ずともプレイヤーとして活躍していた幻の6人目」
「何…!?」
「そんなあなたが何故…」
―周りが相手にならなくなってしまったらどうしますか?
―強すぎてつまらなくなってしまったらどうしますか?
あのときの黒子の言葉と表情が頭をよぎる。黒子は何が言いたかった。何を伝えたかった。何を、求めた。
「…黙っていてごめんなさい、火神くん」
なんでまたそんな表情を、
どうして謝るんだろう。
どうしてそんな、泣きそうに笑うんだろう。