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教師からの呼び出し。もう馴れた。というか、飽きた。
お前そんなので大丈夫なのか学生生活はあっという間だ進路は決めたのかバスケだけが出来てもこれからの世の中云々。はいはい分かりました分かりましたそれ先週も聞きました。ということでサヨウナラ先生また明日。そう言ってきて(逃げてきて)、部活に行ったら信じられないことに担任はキャプテンとカントクに告げ口していたのだ。鬼の形相でいる2人の先輩に何も言い訳出来ず、担任によって組まれたオレ専用特別課題が渡された。ちなみにこれを終わらせるまで部活に参加することは禁ずるという命も出された。絶対に許さない。
「アンタが悪いんでしょーが」
ゴンっ、とバインダーの角で頭をど突かれる。なかなかに痛い。カントクとキャプテンに見下ろされているオレはただ、スンマセン、と呟くしかなかった。現在オレは体育館で正座させられている。
「ていうかお前、そんなに頭悪かったんだな」
「…………」
「ほんっとにバスケ馬鹿なんだから!筋肉脳!」
頭が悪いのは自覚している。というか、もう開き直っている。バスケさえ出来ればほら、人生楽しいし!うん。
「でもお前、次の期末でめっちゃ頑張んないと夏の大会出られねーぞ。追試で」
え。
「赤点取るとキッツいのよねー。火神くん平均はどのくらい?」
「や、平均も何も…ほとんど赤点だった…です」
「………………」
赤点じゃなかったのは英語だけ。まぁ赤点じゃないといっても、それでもギリギリだっただけだけど。ていうかちょっとそれ、かなりヤバいんじゃねーのオレ。
「終わったわね」
「さよなら火神」
「えええ!!嫌っすよ冗談じゃねえ!!」
「完全にお前の自業自得だよだアホ」
「これは望みがないわ夏の大会だけじゃなくて合宿にも火神くんは参加出来そうにないわね」
「火神グッバイ」
「嫌だあああ!!」
強い奴がわんさか来るであろう大会も遠征での練習試合も参加しないでいられるわけがない。しかも理由が追試って。
「ちょっ…何とかなんないんすか!!何とかしてくれよ!!です!!」
「お前が勉強すればいいんだよ…」
「それが出来たらこんなことにはなってないんだよおお!!」
机でちゃんと座って授業受けてるだけでも億劫だというのに。寝てるけど。まず勉強の仕方が分からない。だって分かんねーのに自分1人で出来るかっつーの。分からないところが何処なのかも分からん。
「オレかリコが見れてやればいいんだけどな…」
「今からは練習抜けるのは無理だし明日は練習試合よ」
「はっ!!そうだった!!」
「…お前は連れて行かん」
「わああああ!!」
結局、今日から2週間後に迫った期末テストの間オレは部活停止令を出された。何ということだ。テスト一週間前には全部活動がテスト休みになるが、オレは特例だ。特例の、2週間前テスト休みなのだ。
「そんな特例嬉しくねーよ…」
「とりあえず今日は部活終わるまで図書室で勉強して来なさい」
「えぇー…絶対退屈なn」
「今すぐ行け殺すぞ」
「行ってきます」
高校に入学して図書室なんて初めて来た。図書室なんて無縁だからな。無縁のはずだったんだけどな。
「誰もいねーし…」
夕日で室内がオレンジ色に染まっている。外からはサッカー部や野球部の活動している声。いいなあ、オレも今頃は普通に体育館でバスケしてたのに。
とりあえず近くの椅子に適当に座る。あー、図書室っつっても使い方分かんねーし。なにしとけばいいの、読書?あ、勉強だっけ。
「何かもう…やる気ねー…」
ぐでっ、と机に突っ伏した。もうこのまま寝ちまおうかな。カントクに見つかったらめちゃくちゃ怒られるだろうけど。部活終わるまで1時間はまだあるし。ん、あれ、いつの間に目の前に水色なんか……
「っうおおお!!びっくりしたー!!」
「僕もびっくりしました。寝てるのかと思ったのに」
驚いて一気に立ち上がると椅子が勢いでぶっ倒れた。いやそれよりも、本当にいつの間にか現れた女子にじっと見つめられて、オレは目が逸らせなかった。
それがオレと彼女のはじまり
何てことない、放課後のことだった。