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体育館に響くバッシュのスキール音。
声を掛け合う汗だくの部員たち。
「はい集合!」
笛が鳴って、カントクの側に駆け寄る。
「えー、先日みんなが心配したバ火神の試験は無事に何事もなく終えました!」
「お疲れっしたー!!」
「うっ…」
い、嫌みったらしく声揃えやがって…そりゃあみんなに迷惑はかけたけども…
「バ火神の追試決定を免れたのも、この黒子さんのー…あれ、黒子さん?」
キョロキョロと見渡すカントク。部員たちも頭に?を浮かべてる。黒子?
「あの、ここにいます」
「うわっ!?」
ひょっこり現れたのは、水色の綺麗な髪。ジャージを着ていて、いつもよりひょろっちく見える。ていうか相変わらずの影の薄さ…
「ご、ごめんね!じゃあ自己紹介してもらっていい?」
「この度誠凛バスケ部のマネージャーをさせて頂くことになりました、黒子テツナです。よろしくお願いします」
黒子はマネージャーとして、バスケ部に入部することになった。昨日決めた、2人で「キセキの世代を倒す」という目標。そのためにオレを全力で支えると黒子は言った。オレの影、として。
「キャプテンの日向だ。歓迎するぜ」
「よろしくお願いします」
先輩たちも、バスケ部はみんな良い人たちばっかだからすぐ打ち解けられるだろうな。影の薄さには毎回驚かされるんだろうけど。
「解散!」
今日の練習が終わった。
「黒子ー」
更衣室に向かう途中で、道具の置き場所をカントクと降旗に教えてもらってる黒子に声をかける。
「はい」
「着替えたらちょっと待っとけよ、マジバ行こーぜ」
「分かりました」
…ん?
「なんだよ、ですか…」
カントクと降旗がやけにニヤニヤしながらこっちを見てくる…ていうか降旗までなんなんだよ!
「んーん、なんでも?」
ここから始まる新しい僕らの物語
「なんかカントクに誉められてたじゃん。流石って感じだけど」
「皆さんが細かいところまでよく教えてくれますから」
黒子が入部して一週間。すっかり黒子は馴染んでいた。
「本当に良い人たちばっかりです」
黒子の数少ない表情の、よく見ておかないと分からない変化。これを見つけるのが最近のオレの楽しみだったりする。そして、黒子の変化は表情だけじゃなかった。
「…髪、短くなったな……」
黒子の綺麗な水色の長い髪は、肩くらいの位置までになっていた。
「ボクも気合いを入れようと思って」
「気合い?髪が?」
「火神くんと、誠凛のみんなで日本一になるという夢に向かって」
そのための気合いです。
無表情で、何を言っても割と冷静な黒子。でも最近新たに分かったことは、意外と頑固で熱い奴だったりする。
「ふーん。オレは短い方が良いと思うぜ」
もちろん、長い髪も良かったけど。
「改めてこれからよろしく。相棒」
「はい」
拳を合わせて、笑った。
「火神くん、さっきのは伊月先輩にパスをするべきでした」
「こらぁ、動きが鈍いっ!」
「…カントクに負けず劣らず厳しいね黒子さん…」
「さすが帝光…」
「無駄話しない!!」
いつもと変わらない日々。
オレは先輩のガードをくぐり抜けてダンクを決める。
「うお、火神スゲー!!」
そんな日々のなかに、嵐は突然やってきた。
「ふーん。なかなかみたいっスね、誠凛も?」
いつの間にか体育館の入り口に男子も女子も大勢のギャラリーが出来ていた。騒ぐ視線の先はステージに腰掛けている、金色の長い髪。他校の制服だけど、なんか見たことあるようなないような顔…
「えっ、あれって…」
「う、嘘ぉ!?」
先輩たちも目を丸くしてる。もしかして分かってないのオレだけ?
「…お久しぶりです。黄瀬さん」
軽やかにステージから飛び降りて、平然とコートのなかに入ってきた美少女。黒子の前に立つ。
「久しぶりっス、黒子っち」