自分が思っていたより、ボクはだいぶ独占欲が強いらしい。
「お前いきなり来んだもんよ」
焦ったぜ、と笑う火神くんに微笑み返す。さすがに日付が変わるころは迷惑かと思ったが、火神くんは承諾してくれた。オレがそっち行こうか?と言ってくれたけどそれでは意味がない。
「ていうか家大丈夫か?」
「大丈夫です。こっそり抜け出して来ました」
「…ホントに大丈夫かよそれ…」
実はドキドキしてます。色んな意味で。
そう言うと火神くんはばーか、と言って髪をくしゃりと撫でてくれた。少しだけ顔が赤い。本人に言ったら怒るから言わないけど火神くんは可愛い。もちろん格好良いけど、可愛い。
「何1人でニヤついてんだよ」
「…してません」
「いや、してた」
「してません」
ぐいーっと耳を軽く引っ張る。何だよ、と言ってボクは頬を軽く抓られる。痛くないけど。痛くないけど、こういう時間はむず痒い。嫌じゃない心地良い時間。
「眠いか?」
「いいえ」
後頭部に手を添えられて、がっしりした肩に寄りかからせてくれる。きっと寝ろってことなんだろうけど、寝てはいけない。果たすべき目的があとわずか4分後に待ち受けているのだ。
「何意地はってんだよ…」
「これだけは譲れません」
頭にハテナを浮かべている火神くん。鈍感だとは分かっていたけど、自分のことまで…いや、火神くんなら十分に有り得ることだ。あ、あと2分と少し。
「火神くん」
「ん」
「ボクは火神くんと出会えて変われた。変えて、くれたんです」
「…何だよ急に」
「本気で勝ちたい。火神くんと共に勝ちたい、共にバスケがしたい。練習は厳しいしきついけど、優しくて面白い先輩たちもいて、同級生もいて、火神くんがいて。毎日がとても、充実してるんです」
間違いなく火神くんのおかげです。
カチリ、時計の針が、進んだ。
Happy Birthday!
本当に、ありがとう。
これからも影として相棒として恋人として、君のそばにいさせて下さい。
1日遅れたけどおめでとう火神ん!